真面目な話、あんまりムキになってケンカしたり、逆に気にしすぎても無限に手間がかかるから上手く「いなす」って考え方が必要になるのよね。
今回はそんなメンドクサイ「小生さん」のいなし方についてお話しようか!
理事会をやっていると、「質問」と称して理事会に難癖をつけるようなお手紙(怪文書)が届くことがよくあります。
「理事会は○○すべきです。先日の決定は間違っています」
「理事会は○○すべきではありません」
「理事会は非常識です。○○してください」
要約するとこんな感じの、上から目線のですます調で統一された不愉快極まりない文体のお手紙を読んだことがある方もいらっしゃるかと思います。
マンション管理に携わっているとこういうお手紙は今まで食ったパンの枚数みたいなもので「あー、またか」くらいの感覚なのですが、経験の浅い理事長さんだと「どうしよう…」と罪悪感を感じたり、人によっては「にゃにおう!?」と応戦したりするわけですが、どちらも余計な労力がかかるためできればスマートにいなしたいところ。
今回はそんなメンドクサイ小生さんのいなし方についてお話したいと思います!
今回の話は私の経験上、最もコスパが良いと思う方法についてお話します。
「いいや、そんなことはしないでさっさと斬り伏せるべきだ、だって俺はできるし俺の方が正しいから」という方はそうしたら良いと思いますが、私は万人にとって得策だとは思わないのでオススメはしません。
まぁ、合う合わないはあるでしょうから「こういう対応をしてる人もいるのね」くらいに考えていただければと思います。
理事会にお手紙を出す小生さん
そもそも「小生さん」ってなんぞ?というところからお話すると、
- (多くの場合)年配の男性
- 視野が狭く独善的
- 上から目線のコミュニケーションスタイル
- 理屈を捏ねてるけど区分所有法や規約はよくわかっておらず独自のマイルールを展開する
- (ヒマゆえに)粘着質
という性質を持つ人の総称で、差し出してくるお手紙の一人称が高確率で「小生」なので、私はそういう方々に親しみを込めて「小生さん」と呼んでいます。老害とかいうとあれだからちょっとだけポリコレに配慮
これらの性質は彼らが長い人生で獲得した行動パターンのため矯正は不可能で、あんまり真面目に相手をし過ぎても相手はヒマゆえ無限に難癖を付けてきてこちらが疲弊するだけですから、適度なところでいなしていく必要があります。
「一度は傾聴」するのが大前提
小生さんの言うことを真に受けすぎて振り回されてもいけませんが、全く聞く耳を持たず邪険にするのも考えもの。
自分には理解できないだけで小生さんの言っていることは正論、もしくは考え方次第で小生さんの言っていることも間違いではないという可能性もありますし、もしそうだった場合、
「あの理事長、組合員の意見を聞かず何でも自分勝手に決めちゃうみたいよ」
などと小生さん以外の組合員からの信頼を失いかねません。
まずは相手の主張をよく確認して、他の理事や管理会社にも「どう思います?」と尋ねてみて、自分の主観だけで決めつけないようにしてください。
で、まずは冷静に相手の主張を整理・確認する作業をしましょう。相手の言っていることが法律や規約に照らして明確に間違っている、解釈が間違っている、という場合以外は真摯に受け止めるべきですし、逆に法律や規約に照らして相手の主張が正しいならきちんと対応しないと理事会側の立場が悪くなります。
どんなに失礼でムカついても、間違っているのは自分かも知れないと疑ってみることが大切。
小生さんをいきなり斬り伏せてはいけない理由
俺は一刻も早くあの憎き小生さんをシバキ倒したいんだ!という声が聞こえてきそうですが、その前にどうして小生さんをいきなり斬り伏せてはいけないのかというお話をしたいと思います。
①小生さんも正しい可能性
先ほどご紹介した記事でもお話ししましたが、一口に「意見」といっても
- ○○した方が良い(better)
- ○○すべき(should)
- ○○ねばならない(must)
大きく分けるとこの3つのレベルがあります。
意見の内容として③mustでなかったとしても、①better,②shouldの意見は単に「理事会の裁量」なだけであって、理事会とは異なる意見であったとしても「間違いではない」ものも多くあります。
結論として「その意見は採用しません」であったとしても、単に「理事会の裁量だから」採用しないのか、「(法律や規約に照らして)間違っているから」採用しないのかではまったく意味が異なります。
ここを区別せず、もしくは前者の理由にも関わらず「間違っている」といって正面から突っぱねてしまうとむしろ理事長(理事会)の方が横暴だと思われて立場が危うくなりかねません。
②あなたも「メンドクサイ人」と思われている可能性
これ、意外と多かったりするのですが、一般人から見たらあなたも小生さんも「ただのメンドクサイ人」でほとんど同じに見えている可能性は十分にあります。
心理学用語で確証バイアスというものがあるのですが、人間はとかく「自分が見たいもの」を見がちで、自分の考えや認知の偏り・歪みに気付きにくいです。
絶対に自分の方が正しいと思って力で捻じ伏せにいったら実はどちらも一般人からはメンドクサイ人認定されてて誰も賛同してくれないとか、民忠が足りなくて逆に後ろから刺されて失脚、なんてことはこの業界にいると日常茶飯事です。
特に理事会内部に腹心と言える仲間がおらず、子分は管理会社のフロントさんだけというパターンの人は要注意。
フロントさんは「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」とか絶対に言わないから。
少なくとも理事会内に柱となる腹心ができて、盤石の支持を得るまでは自ら斬り伏せにいかない方が無難です。
俯瞰して見ればお互い単なる組合員の1人なわけですから、勝ちたいなら味方を増やすしかありません。
こうなると勝負所で誰も味方してくれないので時間と労力ばかりかかることになります。
そしてもう1つ、あなたが「こうあるべき」と思っていることが、その他一般の組合員も同意見だとは限りません。
例えば、理事会に対してお客様気分で注文を付ける組合員。
我々のように管理に携わる人間からすれば「あんたは理事会の客じゃねぇだろ」が普通の感覚ですが、そうでない一般の組合員が同じ感覚を共有しているかと言えばそれは違いますから、大衆はどう思っているのかという他者の視点を持つ必要があります。
他者の視点を持つのが苦手だな…という方は私を呼んでください。私があなたの目の代わりをします。
小生さんをいなす3ステップ
さて、ここまでお読みいただいてそれでも俺は嫌われてないという方、俺だけじゃなくて他の組合員も小生さんにはもううんざりなんだ、という方向けに、ここからは小生さんのいなし方実践編をお話ししたいと思います。
但し、この手法はみんながみんな上手くできるわけではなくて、フロントさんでもこれができずに小生さんに粘着されて疲弊してる人もたくさんいます。
特に精神的に打たれ弱かったり、他者の視点が弱かったりするとわかっていてもできないものなので、人付き合い苦手でちょっと無理…という方は、そういうのが得意な人に任せることをおすすめします(なので「まずは味方を集めましょう」というお話をしたわけですが…)。
別に理事長は仕事ではないので苦手なことまで抱え込む必要は無いと思います。
では、前置きが長くなりましたが実践編です!
①とにもかくにも歩み寄る
まずは冷静に意見を聞きつつ、歩み寄りましょう。自身のキャラクターや他の理事との力関係にもよりますが、理事に立候補するのもアリだと思います。私の場合はとにかく理事に立候補してもらって、常に近くでコミュニケーションを取れるようにしていました。
苦手な相手ほど自ら歩み寄る姿勢が大切です。
人間関係って、苦手意識から相手を遠ざけようとするから余計に拗れるわけで、最終的にピシャリとやるにしてもまずは歩み寄る姿勢は忘れないでください。
時々、理事になってみたらめちゃくちゃ仕事がデキる人で理事会の貴重な戦力になっちゃったというパターンもあるので、この方法ならそういう棚ボタも期待できます。
それでも歩み寄るなんて我慢ならん!という方は…
残念ながら他者の視点が足りてません。
たとえいけ好かない相手でも「オトナの対応」をした方が周囲で見ている組合員には印象が良いですし、理事会が終わってから逐一難癖を付けられるより、目の届くところにいてもらって理事会の時にその場で言ってもらった方が手間がかかりません。
マンション管理は多数決のゲームですから本当にその人がおかしな人なら勝手に周囲の心証を悪くして自滅してくれますし、逆にそうでないならあなたも同様に周囲からメンドクサイ人だと思われている可能性が高く、自分の振る舞いや根回しの仕方を見直した方が良いです。
「理事長としてはできる限り歩み寄ろうとしたのですが小生さんが頑として譲らないからやむを得ず…」というシナリオにした方が一般人の賛同を得やすくなります。
そう言う場合は自分はアウェーでの戦いになるわけですから、自分の立場を正しく認識して戦い方を考える必要があります。
いずれにしても小生さんと近いところでコミュニケーションを取って損はありませんから、基本スタンスとして「歩み寄り」は忘れないようにしてください。
②適度に泳がせる
なんだかすっごく性格が悪く聞こえるかもしれませんが、理事会に出てきて貰って、できる限り歩み寄りの姿勢を見せて、それでもにっちもさっちもいかないようならもうピシャリとやるしかないので、後は自由に泳いで他の理事の心証を悪くしてもらいましょう。
先ほども触れましたが、最後のステップで「もう取り合わない」という合意を取る時の大義名分づくりです。
マンション管理は多数決のゲームなので、しっかり大義名分を作ってみんなが「この人はもう話を聞いてもらえなくても自業自得だよね」と思ってもらうように立ち回るのが重要。
組合内での支持が盤石であれば最初から「無礼者!」と斬り伏せても構わないわけですが、支持率が微妙な状況でそれをやると理事長は横暴だとか自分のクビが危うくなりますし、周囲から「もっと意見に耳を傾けるべきだ」とか横槍が入って対応に余計な手間がかかるので、自分の人望を過信しないようにしてください。
③小生さんの話は取り合わないと合意を取る
ここまで来たら、後は意見を出してきても理事会決議で「検討の結果、否決」としていけばOKです。
いきなりバンバン理事会否決にしても構わないのですが、輪番理事は理事長と違って「自分事」になっていないことも多いですし、人は何かしらの大義名分を作ってあげないと協力してくれなかったりします。
人を刺すのってそれなりに心的負担がかかりますから、正当化できるようにしてあげないといけないわけです。
言い方は悪いですがこういうくだらないことで中途半端に6:4とかで意見を割っても仕方ないですし、繰り返しになりますがもしここで割れるようならあなたが間違っている・支持されていない可能性も多分にあるわけです。
なので最終的にやむを得ず仕留めにいくのであれば、これくらい丁寧に根回しをして小生さんを除く全会一致で一発で仕留めるようにしておいた方が良いと思います。
小生さんのいなし方|おわりに
今回は小生さんのいなし方という割と際どいテーマのお話をしたわけですが。
これ、もしかしたら理事長と小生さんが逆だったかもしれねェ…というケースもよくあるんですよね。
というのも、冒頭でもお話した通り法律や規約に照らしてmustじゃないなら理事会(もしくは総会)で賛成多数を得た方が正しい、というだけのお話なので、理事長と小生さんの立場が逆だったら小生さんの意見が賛成多数を得て可決されてる可能性も十分あるんですよ。
まぁもちろん小生さんが恐ろしくトンチンカンでめちゃくちゃな主張をしているケースも多いのですが…
なので小生さんの対応をする、そして最終的に仕留めに行くにしても、その点は頭の片隅に入れておいてほしいなと思います。
後は、あんまり神経質になりすぎないこと。
今はコンプライアンスだ、ハラスメントだ、誹謗中傷だ、名誉棄損だと色々言われる時代になりましたが、ちょっと前まではご近所に1人はどうしようもなく頭のイカレたクソオヤジがいて、みんなわかってるけど「あの人はああいう人だから仕方ないのよ」みたいなのがいたはずです。(というか今でも普通にいるんですが、良い職場に勤め、良いマンションに住むうちに忘れがち…)
人としてそういう振る舞いをすべきでない・許されるべきではないのは当然ではあるものの、人が人として生きていく以上、そして同じ地域・屋根の下で生きていく以上、みんなで何とか折り合いをつけるほかないこともあると思うのです。
だから、みんなで折り合いを付けてあげる。うまく人と付き合えないならみんなで宥めてあげる。
法律や規約ももちろん大事だけど、そういう意識だったり、お互い様の精神も必要よね、と個人的には思っています。
そして、「自分が悪い事しちゃってるかも…」と不安になり過ぎちゃうタイプの、いわゆる「鬱型」の理事長さんも多いのですが、人間が100人も200人もいたら意見が割れるのはある意味当たり前。
1人で抱え込まないようにすれば大丈夫です。
いずれにしても、必要以上にカッカしたり、不安になったりするのは理解ある仲間がいないからだったりします。
もしあなたが必要以上にカーッとなったり、不安になるようなら、それは小生さんと同じくあなたもまた、孤独なのかもしれません。
なのでまずは仲間を作るところから始めませんか、という提案をすることも多いです。
せっかくの夢のマイホームですから、みんなで上手く付き合えるよう頑張りましょう!