しかし、この商品はちょっと「?」なのよね。
長谷工に限らず管理会社が第三者管理や自主管理サービスを推進するそのココロは「フロント業務をやめたい」だと思うんだけど、その観点から考えるとちょっと疑問符が付くというか、なんのためにやるのか見えないというか。
今回はその辺について解説しようか!
最近度々話題になる、管理会社の第三者管理(管理者管理)。
上述の長谷工グループの第三者管理(管理者管理)サービスについて、私はTwitterで「現場は焼ける」と予想しました↓↓
現場は焼けますぜこれは〜笑
— 黒ひつじくん@マンション管理士 (@TDmU7jdTLqYw9Sp) July 30, 2021
今回のサービスで何故「管理会社の現場が焼ける」と思うのかについてまとめてみたいと思います。
この記事は長谷工さんの第三者管理サービスの質が悪いから利用するべきじゃない、ということが言いたいわけではなく、「管理会社にメリットあるの?第三者管理について理解が甘くない?現場のことまで考えてる?」という疑問に基づき書いています。
↓にリンク貼っておきますが、管理会社の第三者管理の問題点については以前書いた通りなのですが、その問題点に対して安直に「じゃあその問題が起きなきゃいいよね!」でやってるんじゃないかという気がしています。
今回は「管理会社の中の人(だった人)」の視点のおはなしです。
ま、「第三者管理」という言葉がポピュラーになってきたら私もそう呼ぶかもしれませんw
記事中で指摘している問題点も、長谷工さんからしたら「そんなことはわかっててやっとるんじゃ!じゃかあしい!」って感じかもしれません。笑
管理会社の第三者管理(管理者管理)って何?
長谷工さんの第三者管理サービスのお話の前に、管理会社の第三者管理(管理者管理)については↓の記事でまとめているので、「そもそも第三者管理(管理者管理)って何?」という方は先にこちらをお読みください。
要するに、理事会を置かず、区分所有者以外の誰か(法人含む)を「管理者」に選任して管理を任せるのが第三者管理(管理者管理)です。
第三者管理(管理者管理)は今に始まったことではない
俄かに話題になっているように思われるかもしれませんが、管理会社による第三者管理(管理者管理)は今に始まったことではなく、ほとんどの区分所有者が居住せず賃貸に出している投資用ワンルームなどでは以前から普通に行われていました。
売る方も買う方も利回りが出ていさえすればよく、「管理なんかどうでもいいから決まった管理費の中でやりくりしてくれればそれでいい」というニーズにはドンピシャな方式でしょう。
第三者管理(管理者管理)のメリット
第三者管理(管理者管理)を採用するメリットは?というと、管理会社視点と区分所有者視点で若干違いはあるものの、
- 理事会をやらなくて済む
- 役員の成り手が不要
- 合意形成不要
あたりが主なメリットでしょうか。
管理会社視点で言えば、組合によっては年間10回程度開催している理事会を完全に無くせるので、業務量は大幅に削減できます。
役員の成り手がいない組合では管理会社のフロントさんが1人ずつ電話をかけて「役員やってくれませんか~?」とか探すことになるわけですが、これもやらなくて済む。各種支払い承認の印取りも不要。
そしてこれが第三者管理(管理者管理)最大のメリット、【合意形成が不要】です。
理事会やってて、さっさと話まとめて次行きたいのに意見が割れて意固地になって一歩も譲らなかったり、理事会はすんなり話が通ったと思ったら一部の組合員から猛烈な抗議があって振出しに戻ったり。
理事会でさっさと決めてしまえば良いのに「とりあえずアンケート取ってみよう!」とか言い出す人がいたり。
そう言うのをほぼガン無視できるのが第三者管理(管理者管理)のいいところ。
第三者ならそこに一緒に住み続けるわけじゃないからその人に嫌われたって一向に構わないし、その人が1人で騒いだところで解約はできず、1/5以上の仲間を集めなければ総会招集も請求できない(し、管理会社の管理者管理の場合は規約ベタ書きにしてることが多いから四分の三以上必要で実質解約不可能)。
要するに、手間暇をバッサリカットできるから第三者管理(管理者管理)にするわけです。
「区分所有者全員参加型」第三者管理の問題点
という点を踏まえて、今回の長谷工さんの「区分所有者参加型」第三者管理の何が問題だと思うのか、一言でいうと。
区分所有者全員参加させたら第三者管理(管理者管理)の意味無くね?
です。
管理会社が第三者管理(管理者管理)を採用する理由は「労力の削減」です。これは先ほど説明したとおり。
組合から見たら「役員の成り手が~」も立派な理由かもしれませんが、少なくとも管理会社視点では第三者管理(管理者管理)最大のメリットは合意形成というプロセスの排除にあるはず。
にも関わらず、
>単に理事会を廃止するだけではなく、第三者管理者方式においても多くの区分所有者にマンション管理への関心をお持ちいただくため「マンションの付加価値向上に向けて区分所有者全員がアプリ上で議論し意思決定を行うことのできるツール」を採用しつつ
とありますがこの「アプリ上で議論」をさせてしまっては労力の削減ができないんじゃないかなぁ…
ですが、これをやってしまうと管理会社、特に現場の担当者にとっては相当キツいと思います。この後解説します。
区分所有者を議論に参加させると何が起こるか
では、管理会社の第三者管理(管理者管理)で区分所有者を議論に参加させると何が起きるのか。
私が予想するのは次のようなケース。
①収拾がつかない
アプリ上での議論についてはこちらを見る限り1/10以上の賛同で可決という扱いにするようですが
これ、クレームを付けたい人にとっては「たったの1割しか賛成していないのにおかしいだろ!」とか格好のネタになりそうなんですよね。
それでも「そういうルールなんで」と毅然と言えれば良いのだけど、たぶん管理会社にその対応はできない。というか、区分所有者全員参加型のこのサービスでは絶対にできない。
「あれ?そういうのはガン無視できるのが第三者管理じゃなかったの?」
そう思ったアナタ。何故それが可能だったと思います?
それは、
組合員の大半が管理に無関心で、
マンション内に居住しておらず(=お互い連絡が取り合えず)、
徒党を組んで管理会社を引き摺り下ろすことができないから
です。
議論ができる(それもアプリ上で!)ということは1/5集めて総会招集請求することはさほど難しくないでしょうし、投資用ワンルームと違って実需マンションなら多くの方はマンション内に住んでますからちょっとコミュ力ある人なら簡単に頭数揃えてくるでしょうね。
そんな状況で担当者は毅然とした対応ができるのか。
もっと言うと本社は「毅然と対応せよ」と指示できるのか。
毎月理事会で顔を合わせているわけでもないから関係性もできておらず、話し合いによる和解も困難。
それでも、その状況で本社から出る指示は
「お客様に失礼の無いよう真摯に対応してください」
なんじゃないかというのが私の予想。
②「決めたのは組合さんですから」が使いにくい
管理会社の有名な殺し文句で、「決めたのは組合さんですから」というのがあります。
要するに、決めたのはウチじゃないからウチに言われても困る、ということです。
ところが、管理会社が管理者になっちゃうとこの答弁が使えない(管理者なんだから当然だけど…)。
だからこそ、今までは組合員の大半が管理に無関心な投資用ワンルームで採用されていたわけで。
管理に関心のある組合員から注文が付けば、これも本社からの指示は
「お客様に失礼の無いよう真摯に対応してください」
で、担当者は無限に【ゴン攻め】されそうな気が…
いわゆるモノ言う株主がいる組合で管理会社が管理者になるのは自殺行為に近いのでは、と思っています。
③全員の顔色を伺わなきゃいけない
私が担当者だったら一番キツイだろうなぁと思うのがこれ。
以前フロントの奥義・口寄せの術というnoteを書いたのですが、何か議論する時って中心となる人物を立てて議場をコントロールしていかないと、みんな好き勝手言いたいこと言うばかりで一向に話がまとまらなくなりやすいんですよね。
そこで、中心人物(キーマン)をこちらで担ぎ上げて、その人を「押さえて」おけば議場がコントロールしやすい、というのが口寄せの術の考え方。
ところが、アプリ上での議論だと中心人物不在で意見が飛び交うから、とてもじゃないけど話なんかまとめられない。某マンション住民向け匿名掲示板なんかが良い例。
まとまらない議論に延々と振り回されて、納得できない組合員にゴン攻めされて、それでもお上の指示は「失礼の無いよう真摯に対応せよ」では現場の担当者はやりきれないよなぁ…
で、現実的には、第三者管理と言いつつも声の大きな人に引っ張られ、忖度するしかなくなるんじゃないかという気がします。
管理組合って元々そうなりやすいのでそれ自体を否定はしませんが、そうなると管理会社的には「組合さんが決めたことですから」という殺し文句を失っただけで既存の理事会方式とさほど変わらず、あんまりメリットないんじゃないかな…が私の疑問です。
じゃあなかむーならどうするの?
ひとまずここまでの話を整理すると、
- 管理会社の第三者管理(管理者管理)は無関心層(投資用ワンルームや超高額物件)向けには有効だけど「モノ言う株主」がいる実需マンションには不向き
- 第三者管理(管理者管理)なのであれば組合員に議論させるべきではない
と思います。
「エラソーにあーだこーだ言ってるけど、じゃああんたならどうするの?」という声がそろそろ聞こえてきそうなので、このあたりで「私だったらどうするか」というお話を少し。
もし、冒頭の記事のように「マンションの経年劣化に伴う修繕工事に対する専門的な対応の必要性」、「コロナ禍における理事会招集」、「役員業務を担う上での時間的拘束」、「担うべき責任の重さ」、「区分所有者間の合意形成の複雑さ」、「高齢化に伴う役員の成り手不足」が問題となっているのであれば、
私だったら、理事会制度は残したままマンション管理士等の第三者を「職員」として雇います。あ、お問合せフォームのリンク貼っておきますね。
マンション標準管理規約第38条(理事長)
理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。
一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職
務として定められた事項
二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。
これを使います。
どういうことかと言うと、例えば、「マンションの経年劣化に伴う修繕工事に対する専門的な対応」を組合員の理事会だけでやろうとするから議論に時間が掛かる。だったら工事の要否や仕様決定等の実務はマンション管理士等の「職員」に準備させて、理事は賛否の意思表示をするだけにすればよい。
「コロナ禍における理事会招集」についても、議題については「職員」が結論を決めておいて、これも理事は手紙でもメールでも賛否の意思表示をするだけにすればOK。
「役員業務を担う上での時間的拘束」、「担うべき責任の重さ」、「区分所有者間の合意形成の複雑さ」、このあたりもこれでまとめて解決できます。
「高齢化に伴う役員の成り手不足」、これも長時間の拘束や情報収集等の雑務があるから成り手がいないのであって、「大筋はマンション管理士がプラン立ててるから、30分くらいお茶でも飲みながら説明聞いて、問題無ければゴー出してよ」と言えば何人かは集まるのでは?(もしそれでも集まらないならそれこそ完全な第三者管理に移行すべき)
で、今私が提案した方式が、管理会社の第三者管理(管理者管理)と決定的に違うのは、
- 理事会方式は残るから、「職員」が暴走したらすぐ解約できる
- 上司や本社の指示で嫌々やっているわけじゃないから議論に付き合うべきところは付き合うし、毅然と対処すべきところは毅然と対処できる(それで解約されても上司や本社も無いから怒られないし…)
という点。二つ目は管理会社のフロントさんじゃないとあまりピンと来ないかな…笑
組合毎の事情に合わせてに少しだけ規約やの整備が必要になるかもしれませんが、私だったらこういうご提案をすると思います。
長谷工グループの「区分所有者全員参加型」第三者管理サービスまとめ
今回は長谷工グループの「区分所有者全員参加型」第三者管理サービスについてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。
第三者管理(管理者管理)にはメリットもデメリットもあり、それをきちんと理解した上で、自分の組合に合っているのかしっかりと検討することが大切だと思います。
自分達で理事会をやるのは負担、だけど完全に管理会社に任せるのはちょっと…とお困りの方はぜひご連絡お待ちしております!