多くのマンションで設置されている機械式駐車場。
都市部では公共交通機関の利便性が高いため車を持たない人も多く、マンションの機械式駐車場も半分近く空車…なんてことも珍しくありません。
「契約者が減って月々のメンテナンス費用が賄えない…」
「機械式駐車場メンテナンス費用の相場っていくらくらいなの?」
「機械式駐車場の耐用年数ってどれくらいなの?」
このようなお悩みを抱えた管理組合も多いと思います。
そこで今回は、
- 機械式駐車場の耐用年数
- メンテナンス費用の相場
- リニューアル工事の費用
- リニューアル、撤去時の注意点
についてお話ししたいと思います!
駐車場のメンテナンス料金は保守会社の営業所からの距離や、パレットの数等によっても左右されます(例えば1現場で100パレットを超えるような大規模マンションだと単価が下がったり、保守会社の営業所から離れていて近くに他の現場が無いと単価が上がることもあります)。
ここでご紹介する金額は飽くまでも目安と考えてください。
機械式駐車場の耐用年数
機械式駐車場の法定耐用年数は15年です。
が、じゃあ15年したらリニューアルしなきゃいけないかというとそうではなく、経験上きちんとメンテナンスをしていれば25年~30年くらいは持つ、という印象。
但し定期的に部品交換や鉄部塗装は必要で、各部品の耐用年数(メーカー推奨)の目安は以下の通り。
- 電装部品(リレー、リミットスイッチ等)…5年
- 駆動部品(スプロケット、チェーン等)…7~10年
- 駆動部品(モーター等)…10年
- 鉄部塗装…4年~6年
実際にはメーカー推奨の耐用年数+5年あたりからよく壊れ始めるので、壊れ始めてから手を付ける管理組合も多いです。
鉄部塗装についてはやらずにほったらかすと錆が進行してまっ茶色なリアル廃墟の一丁上がりです。
で、そこから更に熟成させるとパレットに穴が開くので、鉄板で継接ぎするかリニューアルするしかなくなります。
最近ではドブ漬けパレットも多く、メーカーの営業さん曰く、
「30年塗装不要で錆びる心配はありません!」
…さすがにそれは無理な気がしますが、長期間持つようになりました。
電装部品と駆動部品は「高いし、まだ壊れてないし…」とかで交換を先延ばししている管理組合も多いですが、どちらも壊れたら機械式駐車場が動かせず、必要な時に車が出庫できない、ということになりかねません。
特に駆動部品についてはスプロケットやチェーンがダメになった状態で昇降させると、パレットが傾いたり、それによりシャフトが曲がって交換が必要になる等、余計高くつくことになりますので要注意です。
また、スプロケットについては最短で7年目で破損し、パレットが脱落したマンションがありました。
機械式駐車場メンテナンス費用の相場
機械式駐車場の保守会社も、エレベーターと同じようにメーカー系と独立系があり、基本的には独立系の方が安価です。
また、細かい分類は避けますが「多段式(パズル式)」と「タワー式」で相場が変わりますので、分けてお話しします。
多段式(パズル式)の場合
多くのマンションで採用されている機械式駐車場はこちらのタイプ。
独立系の場合、年4回の点検で1パレットあたり2,000円~2,200円くらい、ここに管理会社の手数料でだいたい10%くらい乗るので2,200円~2,500円/1パレットが相場。
メーカー系の場合はこれより200円~1,000円くらい高くて3,000円/1パレット前後が相場だと思います。
年6回点検や年12回点検等、点検回数を増やせば1パレットあたりの金額はもう少し下がります。
また、地下ピットがある場合は排水ポンプが入っているので、機械式駐車場の保守点検とは別にピット内の清掃(やらないと排水ポンプが落ち葉等のゴミを噛み込んで不具合の原因になる)、排水ポンプ点検等も必要になります。
また、法定点検ではないため保守契約を結ばなくても直ちに違法とはなりませんが、定期的にグリス注入等をしなければ故障の原因になりますし、不具合発生時のスポット対応費用で1回30,000円以上請求されるため、現実的には年4回以上の保守契約が必須と言えます。
タワー式の場合
タワー式については公益社団法人立体駐車場工業会の安全基準で1ヶ月毎の巡回点検を推奨しているため、原則として1ヶ月毎(年12回点検)となります。
また、2ヶ月毎(年6回点検)で受けてくれる保守会社もありますが、立体駐車場工業会の安全基準外のため緊急対応費用は別途請求等一定の条件が付くことがほとんどだと思います。
金額的には、独立系の場合年12回の点検で1パレットあたり2,200円~2,500円くらい、管理会社の手数料込みで2,500円~3,000円/1パレットくらいが相場。
メーカー系の場合は多段式と同じく1パレットにつき+200円~1,000円くらいです。
これだけ見ると独立系の方が良さそうに見えますが、
- メーカー系と比べて部品供給に時間がかかるケースがある
- 部品交換では解決しない重故障の修理が出来ないケースがある
- 多くの独立系保守会社がメーカーの下請けとして仕事をしており、契約上の問題で見積辞退となるケースがある
ということもあり、一概にどちらが良いとは言えません。
技術指導を受けてメーカーに断りなく別現場で保守契約を締結すると契約違反となるため、タワー式で独立系に見積を依頼しても辞退されたりします。
機械式駐車場のリニューアル費用
一般的に、機械式駐車場のリニューアル費用は100万円~150万円/1パレットといわれています。
実際に見積を取ってみればわかりますが、会社によってかなり金額にバラつきが出るので相見積もりは必須だと思います。
現時点の区画数に対して契約台数が少ない場合は、3段式を2段式に変える等して多少費用を抑えることもできるので、見積もりを取る際は検討してみてください。
数あるマンションの設備の中でも最もお金がかかる部分でもありますので、将来的な修繕費用を見越してしっかり修繕費用を積み立てておきましょう。
管理会社もよくわかってなくて付置義務違反になってしまっているマンションもあるのでは…という気がします。気がするだけです。気のせいでした、なんでもありません。
契約台数が少なければ撤去・埋立てを
機械式駐車場に限った話ではなく、受水槽等もそうなのですが…
機械式駐車場って、敷地が広ければ平置きにしたいのだけど、限られたスペースに付置義務や地域特性等も考慮して区画数確保するために苦肉の策で設置していることが多いんですよね。
なので、契約台数が少なく今後増える見込みもないような場合は撤去・埋立てをしてしまうのも一つの手です。
リニューアルするより費用もかなり安く済みます。
また、地下ピットがある場合は機械を撤去して鋼板で塞ぐ方法と、埋め立てる方法がありますが、鋼板で塞ぐだけだと排水ポンプは撤去できないため、特別な事情がない限り埋めてしまった方が良いでしょう。
リース契約でリニューアルする際の注意点
機械式駐車場のリニューアル時期を迎えたけど、リニューアル費用が足りない…という時は、リース契約でリニューアルすることも可能です。
リース期間は会社にもよりますが15年~17年くらい。
期間中の経年劣化による部品交換は基本的に無償なので、将来的な支出の見通しは立てやすい反面、途中で解約ができないため、リース期間中で契約者が減少する等して駐車料収入が減ると駐車料収入だけでリース料を賄いきれなくなる可能性もあります。
駐車場会計を別途設けてリース期間中に収支が赤字にならないよう詳細に試算する等、慎重な検討が必要です。
機械式駐車場の耐用年数やメンテナンス費用まとめ
今回は機械式駐車場の耐用年数やメンテナンス、リニューアル費用の相場等についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
機械式駐車場の維持・修繕、リニューアル工事には多額の費用が掛かります。
また、今回お話しした相場は飽くまでも一般論ですので、これよりも費用が掛かる可能性もあります。
将来的なリニューアル工事等に備え、築浅のうちからしっかりと資金計画を考えておきましょう!