たびたび問題になる、分譲マンションでのペット飼育に関わるトラブル。
皆さんのマンションでもトラブルになったことはありませんか?
「ペット飼育禁止なのに犬を飼ってる人がいる…」
「飼育禁止のペットを飼っている人がいたらどうすれば良いの?」
「ペット飼育を認めるよう規約改定してほしいとの意見があったけど、そんなことできるの?」
そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、
- 分譲マンションでのペットトラブル
- ペット飼育禁止のマンションで飼育を発見したら
- ペット飼育を禁止したり認める規約改定は有効か
等についてお話ししたいと思います!
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分譲マンションでのペットトラブル
最近の分譲マンションはペット飼育OKであることが多いですが、それでも飼育できるペットの種類についてはペット飼育細則等で定められていて「成犬時に〇cm以内」「〇cm×△cm×□cmのケージに入るサイズであること」等の制限が設けられているマンションがほとんどではないでしょうか。
また、20年ほど前の分譲マンションだと「小鳥・魚類を除く」ペットの飼育が禁止されているマンションが多いと思います。
ペットが好きな方や、子どもの頃から親が一棟オーナーだったり戸建てを持っていたりした方はピンと来ないかもしれませんが(うちの嫁ちゃんがこのタイプw)、分譲マンションの場合は様々な価値観の人が同じ建物で生活するため、ペット飼育OKのマンションであってもトラブルになりやすい、ということは把握しておいてください。
分譲マンションでのペットトラブル事例
トラブルのパターンとしては、「管理規約・使用細則でペット飼育が禁止されているのに違反して飼育しているケース」と、「ペット飼育はOKだけどペット飼育細則に違反しているケース」があると思います。
前者の場合、
- ルーフバルコニーでゴールデンレトリーバーを飼っている人がいて、抜け毛が飛んできたり臭いがして困っている
- 部屋で猫を何匹も飼育しているが、清掃をしないために廊下まで悪臭が漂っている
- 隣の住戸の猫がバルコニーを通って入ってきた
というような苦情を受けた経験があります。
この場合、そもそもペット飼育が禁止なわけですから、管理組合として注意する等の対応が必要でしょう。
具体的にどのような対応を取るかは後述します。
後者の場合によくあるのは、
- 共用部分(廊下・エレベーター等)では抱き抱えて移動する決まりなのに、抱き抱えていない
- 飼育禁止の危険な動物(毒のある蛇や昆虫等)を飼育している
等です。
この場合は、管理組合(理事会)からペット飼育細則等のルール守るようしっかり説明しましょう。
また、賃借人の場合は区分所有者に連絡して賃貸借契約を解除してもらい、退去させるという方法もあります。
ペットに関する裁判の判例
結論から言うと、
- ペット飼育禁止の管理規約の定めは有効
- 既にペットを飼育している人がいて、後からペット禁止の定めをすることも有効
です。
ペット飼育禁止の管理規約の効力が争われた裁判の有名な判例として、東京地方裁判所平成6年3月31日判決があります。
また、東京高等裁判所平成6年8月4日判決では、ペット飼育を禁止する規定の新設が既に飼育している区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとはいえない(=後からペット禁止にすることも可能)という判断が下されています。
ペット禁止のマンションで飼育を発見した場合
では、管理規約等でペット飼育が禁止されているにも関わらず、ペットを飼育している人を発見した場合はどうすればよいのでしょうか。
動画でもお話ししましたが、管理規約違反だからといって直ちに追い出すことは現実的には難しいです。
区分所有法第五十七条
区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
要するに、「迷惑だからやめなさい」ということはできますが、やめなかったからといって強制的に追い出す効力はありません。
区分所有法第五十八条
前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
区分所有法第五十九条
第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
また、訴訟によって上記のような請求をすることもできますが、条文にもあるとおりハードルがかなり高く(特に第五十九条の「他の方法によつては」)、実際にこの規定を利用して単にペットを飼育しているだけの人を追い出したという事例は聞いたことがありません(逆にあったら教えてください)。
ペット飼育の「一代限り容認」という落としどころ
以上のような理由から、多くのマンションでは、「現在飼育しているペット一代に限り容認する」という総会決議を落としどころにしていると思います。
もし検討する場合は管理会社に相談してみてください。
過去に他のマンションでの使用した議案書等の蓄積があるはずです。
とはいえ、これではルール違反をした人からしたらノーリスクですので、言い方は悪いですが「やったもん勝ち」で納得のいかない方も多いでしょう。
そこで、マンションによっては上記の総会決議に加えて「月額〇〇円のペット飼育負担金を組合に納めること」という条件を付けたり、
私の先輩のマンションではペットの写真と部屋番号、区分所有者の実名を掲示板に貼って飼育をやめるまで晒すというなかなかクレイジーなことをやってましたw
ペット飼育負担金や違約金を徴収する場合でも、まずは当事者としっかり話し合い、納得してもらった上で総会決議をするのが基本だと思ってください。
他の記事でも繰り返しお話ししていますが、管理組合運営は人と人とのお付き合いが大前提です。
今後も同じマンションに住むわけですから、感情的にならずできる限り話し合いで解決するようにしてください。
マンションでペットを飼えるように規約変更はできる?
これも結論から申し上げますと、総会の決議によりペット飼育可とすることが可能です。
区分所有法第三十一条
規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
ただし、といいますか、これも繰り返しになるのですが…
ペット飼育が元々禁止されているということは、中にはペットが苦手だったりペットアレルギーなので、ペット飼育が禁止されているこのマンションを購入したという方もいます。
で、このような方がいる中で、法律上の要件を満たしたからといってペット飼育を認める規約改定の決議をするというのは、個人的にはおすすめできません。
法律上問題がなくとも、分譲マンションの管理組合運営は人と人とのお付き合いで成り立っていますから、強硬に決議をすれば遺恨が残りますし、得策ではないと思うのです。
仮に総会に上程したとしても全体の四分の三の賛成を集めるのは難しいと思います。
分譲マンションでペットトラブルまとめ
今回は分譲マンションでのペットトラブルについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
最近はペット飼育可の分譲マンションも多いですが、それでも飼育できるペットには何らかの制限があることがほとんどですし、共同住宅ですから近隣とのトラブルも発生します。
ペット飼育の問題に限ったことではありませんが、「規約でこうだから」「法律でこうだから」だけではなく、色々な価値観を持った方がいるということを十分理解し、お互いに配慮しあって生活することを心がけるようにしましょう!