分譲マンションを購入してしばらくすると、「理事会開催のご案内」や、「総会開催のご案内」という書類が届き、なんじゃこりゃ?と思った経験のある方も多いのではないでしょうか。
「よくわからないので放っておいたら管理会社から電話がかかってきた…」
「理事会の案内が届いたが初めて出席するのでどうしたら良いかわからない…」
「『総会の委任状が出ていないので早急に提出してください』と言われたが安易に出してよいのかわからず不安…」
私自身、この業界に入るまで分譲マンションに住んだことが無く、最初はさっぱりわかりませんでした。
初めてマンションを購入された方であれば、同じようにわからないことだらけだと思います。
今回は、
- マンションの理事会と総会とは何か
- マンションの理事会、総会の案内が来たらどうすればよいか
- マンションの理事会、総会に出席する時に気を付けること
についてお話ししたいと思います!
マンションの理事会って何?
分譲マンションを購入すると、「理事選任のお知らせ」もしくは「理事会開催のご案内」といった書類が届くことがあると思います。
マンションを購入する時に営業マンからなんとなく、理事会がうんぬん、総会がうんぬん…という話を記憶はあっても、何だかよく覚えていないという方がほとんどではないでしょうか。
それもそのはず。
実は、販売の営業マンの大半の方は管理のことなんてほとんどわかっちゃいません。笑
わかっていない人がもっともらしく話をしているのですから、聞いている方はもっとわからなくて当然ですよね。
では、マンションの理事会と総会とは何か、簡単に言うと、
「マンションをどう管理するかを決めるための仕組み」です。
「え?マンションの管理って管理会社がやってくれるんじゃないの?」
そう思われる方も多いと思いますが、それは半分正解で半分ハズレです。
管理会社がやってくれるメインのお仕事は、ざっくり言うと
- 会計業務
- 出納業務
- 修繕工事を実施する際のサポート等
になります。
契約内容によっては管理員さんの雇用や清掃・点検業務がここに加わりますが、あくまでもマンション管理会社の本分は【お金の管理】です。
マンションの管理会社は単なる御用聞きじゃないんですね。笑
そのため、お金の管理(会計処理実務)以外のことは、マンションの区分所有者全員(管理組合)で決めなければなりません。
ところが、マンションを購入された方全員で都合を付けて話し合いをするのは現実的に難しいですし、なにより全員の意見を聞いていては収拾がつかなくなってしまいます。
そこで分譲マンションでは、管理の事を話し合うため、区分所有者の中から数名の「理事(役員)」を選出し、理事の話し合いで管理の方向性を決めることにしたのです。
これが「理事会」です。
理事会メンバーに選任されたら
理事会メンバーは、総会(後述します)で選任します。
多くのマンションでは輪番制をとっていますので、数年に一回は理事会メンバーを務めることになります。
理事会メンバーに選ばれた場合、基本的には理事会に出席しなければなりませんが、仕事や子どもの学校行事などでどうしても都合が付かない場合は管理会社や他の理事会メンバーに欠席の連絡をしておきましょう。
理事会で決めること
マンションの理事会で決めることについて、マンション標準管理規約では以下の事項が挙げられています。
- 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案
- 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案
- 長期修繕計画の作成又は変更に関する案
- その他の総会提出議案
- 第17条(専有部分の修繕)に定める承認又は不承認
- 第58条第3項(収支予算の作成及び変更)に定める承認又は不承認
- 第60条第3項に定める未納の管理費等及び使用料の請求に関する訴訟その他法的措置の追行
- 第67条(理事長の勧告及び指示等)に定める勧告又は指示等
- 総会から付託された事項
1~4は最終的に「総会」で賛否を問う必要があるため、総会で賛否を問うための「素案」を理事会で決めます。
5~8は予めマンションの管理規約で理事会が決定してよいとされていることについて決めます。
9は総会で決まったことを、決まった通りに実行するという内容です。
初めての方は難しく感じるかもしれませんが、話し合う議題については管理会社がレジュメを用意してくれますし、会計関係の資料は管理会社が素案を作成してくれるので、身構えなくても大丈夫です。
わからないことがあれば質問して、自分の意見を伝えてみましょう。
また、理事会では理事の話し合いで物事を決めていきますが、標準管理規約第53条には
「理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。」
とあり、どうしても賛否が割れた場合は多数決で決定します。
マンションの総会とは?
ざっくり言うと、「重要な案件なので、理事会だけではなく全員の多数決で決めましょう」という議題を審議する会議で、年に1回開催される「通常総会」と、不定期に開催される「臨時総会」があります。
マンションの総会で決めなければいけない事項について、マンション標準管理規約では以下の事項が挙げられています。
- 収支決算及び事業報告
- 収支予算及び事業計画
- 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
- 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
- 長期修繕計画の作成又は変更
- 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
- 第28条第2項に定める建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
- 修繕積立金の保管及び運用方法
- 第21条第2項に定める管理の実施
- 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
- 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
- 区分所有法第62条第1項の場合の建替え
- 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
- 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
- その他管理組合の業務に関する重要事項
難しい言葉が並んでいますが、簡単に言えば
- 収支決算の確認
- 収支予算の決定
- お金の運用方法
- 多額のお金がかかる建て替え等の実施
- 管理会社との契約
- 人の権利に大きな影響を及ぼす訴訟の提起
こういった重大な事項は理事会ではなく総会で決定してくださいね、ということです。
そのマンションの管理規約の内容によって異なりますが、一般的にマンションの総会では、一部の議題を除き、出席者の議決権の過半数の賛成(多数決)で決定します。
「議決権」はマンションの管理規約に定められていますが、「1住戸1議決権」としているか、「専有面積の割合」(例えば、お部屋の広さが37.03㎡であれば37.03議決権)としていることが多いです。
*「建て替え」「取壊し」「災害等による大規模滅失の場合の復旧」「敷地売却」等は出席者の過半数ではなく別途決議要件が定められていますが、話が少々複雑になってしまうため今回は省略します。
ひとまず、「基本的には理事会で話し合って決めて良いけど、重大な案件は総会で多数決を取らないといけないんだな」という認識でOKです。
総会の議案書が届いたら
マンションを購入すると、少なくとも年に1回は総会の議案書が届きます。
ここでは総会の議案書が届いたらどうすれば良いかお話ししたいと思います!
議案書に目を通しておく
マンションの総会の議案書には、総会当日に決議する議案の内容が記載されています。
総会当日、採決の前に質疑応答の時間がありますので、不明な点があればそこで質問しましょう!
また、内容によっては管理会社もすぐに回答できないものもあるため、事前に電話や文書等で質問する内容を連絡しておくと、当日の進行がスムーズになります。
後述する「出席票・委任状・議決権行使書」を提出する際に質問事項をメモ書きしてつけておくと、回答する側は事前に調べておくことができるので親切ですね。
議案書は事前に目を通し、質問事項は事前に伝えておく
出席票・委任状・議決権行使書を提出する
総会の議案書には、「出席票・委任状・議決権行使書」が同封されています(マンションによっては「議決権行使書」は入っていないこともあります)。
出席する場合は、「出席票」を提出しましょう。
各議案に対する賛否は当日総会の中で訊かれますので、その時に賛成か反対の意思表示をします。
欠席する場合は「委任状」または「議決権行使書」を提出しましょう。
「委任状」の場合、総会の議長(理事長)に委任するか、ご家族や他の住戸にお住まいの方に委任することになります。
議長に委任した場合、議長は反対に票を投じることができないため、実質「全議案賛成」に票を投じるのと同じことになります。
これ、かなり重要です。
議長以外の方に委任する場合は、委任された方の判断で賛成することも反対することもできます。
委任する方のお名前を書いて、委任状を提出しましょう。
ただし、誰にでも委任できるわけではなく、委任できるのは「配偶者」「同居する親族」等、管理規約で制限がありますので、管理規約を確認するか、管理会社に問い合わせて確認しましょう。
「議決権行使書」は自分の意思で各議案ごとに賛成・反対の票を投じることができます。
選挙の期日前投票のイメージですね!
委任状と議決権行使書の違い
委任状と議決権行使書の決定的な違いは、委任状は自分以外の誰かが賛成・反対の票を投じるのに対し、議決権行使書は自分自身が直接賛成・反対の票を投じるという点です。
私の個人的な意見としては、欠席する場合は委任状ではなく議決権行使書を提出することをおすすめします。
先にお話ししました通り、総会は「全員で決めるべき重大な案件」を審議する場です。
委任状を出すと一部の人がたくさんの票(議決権)を持つことになってしまいますので、「全員で決める」という本来の趣旨から外れ、本末転倒になってしまいます。
また、マンションによっては議案書に「議決権行使書」が同封されていないこともありますが、管理規約に「書面又は代理人によって議決権を行使することができる」という文言があれば、各議案に対する賛否・住戸番号(号室)・氏名を紙に書いて提出してもOKです。
「書面」の形式は問われていないため、必要な事項(議案に対する賛否・号室・氏名)が記載されていれば、実はコピー用紙でも便箋でも有効な「議決権行使書」として扱われるんですね。
議決権行使書が同封されていない場合でも、自作の「議決権行使書」を提出することができる、ということを覚えておいてください。
総会に出席する時に気を付けること
マンションの総会は「委任状」や「議決権行使書」を提出して欠席することもできますが、できるだけ都合を付けて出席するようにしましょう!
ここでは総会に出席する際に気を付けることをお話ししたいと思います。
基本的に服装は自由
意外と服装を気にされる方が多いですが、余程だらしない服装でなければ普段着で大丈夫です。
定刻の10分前には会場入りする
議長や管理会社は総会終了後に議事録を作成しますが、この議事録には出席者数の記載が必要になるため、総会の前に出席者数の確認を行います。
定刻間際に会場へ行くと総会の進行が遅れる原因になってしまうので、余裕をもって会場へ行くようにしましょう。
わからないことは手を挙げて質問する
総会が始まると、議案の説明→質疑応答→採決という流れで進行していきます。
議案の説明を聴いてわからないことがあれば手を挙げて質問しましょう。
議長や管理会社が説明している最中に遮って質問をしてしまうと進行の妨げとなってしまいますので、質問は必ず質疑応答の時間に手を挙げてするようにしてください。
賛成・反対の意思表示をする
質疑応答が終わると、採決に移ります。
多くのマンションでは、議長から「賛成の方は挙手をお願いいたします」と問いかけ、賛成の数を数えるという方法をとっているのではないでしょうか。
説明を聴いて、どうしても納得がいかない議案については挙手をせずに反対の意思表示をしてもOKです。
棄権することもできますが、総会で議案が可決されるかどうかは「賛成の数」で決まるため、「反対」しても「棄権」しても結果は同じことになります。
総会の場で議案の内容は変更できない
総会では議案書に記載された内容に対する賛成・反対を問うことしかできない点に注意が必要です。
例えば、「自転車置場の増設に関する件」という議題に対し、
「自転車置場は不要なので、そのスペースに駐車場を作ってください」という意見が多数出たとしても、その総会では「自転車置場を増設することに対する賛成・反対」しか問うことができません。
この場合は一旦「反対多数による否決」として、もう一度総会をやり直すことになります。
区分所有法第二十六条で「管理者は、共用部分並びに…(中略)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う」とありますので、取り消しの決議をせずに放っておくとここに抵触する恐れも。
マンションの理事会と総会についてまとめ
今回はマンションの理事会と総会についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
初めて出席する方にとっては馴染みがないかもしれませんが、理事会や総会は自分のマンションをどうして行くかを考える大切な会です。
ぜひ積極的に参加してみてください!