理事会

理事会(理事長)に対する侮辱的な意見や反対勢力にどう対応するべきか

理事長 理事会 意見

今回はちょっと重め、「理事会(理事長)に対する侮辱的な意見や反対勢力にどう対応するべきか」というテーマでお話をしたいと思います。

 

理事長をやっているとしばしば、

「説明不足だ」

「不誠実だ」

「理事長が勝手に決めている」

というような、客観的事実に基づかない、飽くまでもその人の主観でしかない侮辱的な言動を取る人に遭遇します。

 

このテーマ、マンション管理組合の運営に携わっていると必ずと言って良いほど発生するにも関わらず、法律やガイドラインで「正解」が決まっておらず、マンション管理関係の書籍を読んでも「多くの人が納得できる丁寧な説明を心掛けましょう」みたいなふわふわした【建前】しか書いていないという、きわめて情報が乏しい、難しいテーマだと思っています。

 

ただ、確固たる「正解」は無い難しいテーマだとしても、私の経験上これが最適であろうという対処法はありますので、今回は私の個人的な考えとしてお話させていただきたいと思います。

理事長を務める上で、少しでも参考になれば幸いです。

なかむー
なかむー
今回は「私がリーダー(理事長)だったら」これが最適解だと思う、というお話です。

人それぞれキャラクターやキャパシティも違いますから、実務上はリーダー(理事長)の考えも聞きつつ対応を決めていくことになります。

なので「全理事長そうすべきだ」という話でもなければ、「管理士がこう言っていたから理事長は甘受すべきだ」みたいに外野が言うのはもってのほか、お門違いも甚だしいので、誤解の無いようお願いいたします。

黒ひつじくん
黒ひつじくん
また、今回は侮辱的=建設的でない意見や反対をどう扱うか、というお話です(建設的でない意見かどうか、の見極めも難しくここを見誤る方も多いのですが)。相手の主張が正論であれば当然それなりの対応が必要になります。

前提として|私は「独裁型」

理事長 理事会 意見

↑の画像は、理事長の会の代表を務めるはるぶーさん @harubooから拝借しました。

このお話には法律やガイドラインに基づく「正解」はなく、私だったらこうする、というお話なので、まずは私がどういう組合運営をすることを前提としているかというところから。

はるぶーさんの4つの類型でいうと、私は完全に独裁型です。

https://twitter.com/haruboo0/status/1537057767961161728?s=20&t=SYSkm16YMpfeyGVGvzbcgw

独裁というと、横暴とか、傍若無人とか、そういう振る舞いを想像される方も多いかと思いますがそうではなくて、ここでいう「独裁」とは「課題があるなら自分でさっさと解決する」「人任せにしない」という意味で、それ以上でもそれ以下でもありません。

 

管理組合において何か特定の課題を解決するなら、どうやって軋轢なく上手に独裁できるか=多数派を確保し続けられるかが勝負です。

 

その際に理事長が注意を払うべきなのは、事実として独裁かどうかではなく、周りの組合員に独裁者という印象を与えないように振る舞うこと。

 

独裁と言っても多数決のルールからは逃れられませんから、

  • 多くの無関心層から「ゆるーい賛成(支持)」を取り付ける(=絶対的な支持でなくとも「まぁ、やってくれるなら任せるよ」くらいの支持を取り付ける)
  • 細かい事を言って絡んでくる(侮辱的な・建設的でないことを言ってくる)かまってちゃんの懐に入り込んで懐柔する

これを如何に素早くできるかが独裁型改革の要となりますので、この2つは常に念頭に置いて行動します。

なかむー
なかむー
具体的に言えば、

  • 客観的事実ではない「お気持ちの表明」に対しては少々腹が立っても反論せず「お気持ちはわかります」等と受け流す
  • 周りの目を意識して客観的事実で説明が付くものだけ議論に応じる
  • どうしても成し遂げたい肝心要の案件以外は意見が出たらできる限り採用する(枝葉末節はこだわらないで戦略的に手放す)

という立ち回りを続けるということ。

「お気持ちの表明」は文字通り「お気持ちの表明」でしかありませんから、こういうのはお気持ちを汲んであげさえすればそのうち静かになります。私の経験上だと、大体半年くらい相手の言うとおりにしてあげると懐柔できます(重要なのはその間相手に「この人は私のことを理解してくれている」と思わせること。中途半端はダメ。本気で懐柔する)。言い返したところで相手はただ誰かに理解されたい欲求に突き動かされているだけなので、延々と同じお気持ちの表明を繰り返すだけで時間の無駄ですから、うんうんと相槌を打って聞いておいて、周りの人達が「もうその辺でいいでしょう」とウンザリしてくれるのを待つくらいが丁度よいと思います。

黒ひつじくん
黒ひつじくん
優秀な人ほどなんでも自分でできてしまうが故に、全ての案件を自分の思う通りに進めようとしてしまいがちですが、管理組合という組織の性質上、全て自分の思い通りというのは普通は不可能です。

独裁と言っても多数決のルールからは逃れられないわけで、どうしても譲れないキモの部分以外は割り切って戦略的に手放して「組合員の意見をちゃんと聞いている風」の演出と、細かい事を言うかまってちゃんの懐柔に利用できるかが、上手く独裁できるかのカギになります。

侮辱的=建設的ではない言動には反論しない

侮辱的 意見

よくある侮辱的=建設的でない言動については、基本的には否定したり咎めたりせず、淡々と事実を開示した上で「すみませんがご理解ご協力をお願いいたします」というような回答をするのが多くの場合最適解だと思います。

 

例えばよくある「説明不足」「(説明が不足しているので)不誠実」という意見。

これは発言者の主観でしかないので、「2回も説明会をやったじゃないか」とか「1年前から何度も議事録に書いたじゃないか」と言い返してもあまり意味がない。どうせなんも読んでないしね

私だったら、「説明が足りなかったとのことですが、理事会としては○月と○月に2回説明会を開催し、理事会の議事録にも記載して配付しており、議案の賛否の判断に必要となる情報は開示できたと考えておりますが、それでも説明が不十分だということでしたら賛成はできないと思いますので、申し訳ないですが反対票を投じていただければと思います」といった答弁をすると思います。

説明が不足しているか、不誠実かなんて客観的に測れる物差しは無く、逆に言えば先方だって「説明不足」「不誠実」を【客観的に】証明するのは不可能ですから、はいはいごめんね、と聞き流せば良いというのが私の考えです。

 

また、本当にどうでもいい(といっては失礼なので当人には言いませんが)些末な部分に固執していつまでも同じ主張を繰り返すタイプの人もいます。

こういうかまってちゃんの主張は、大した労力がかからないことならばうんうんそうだねありがとう、と聞いてやってあげた方が懐柔がラクになります。

曲がりなりにも私もプロなので理事長にそんなことしてやる義務があるか無いかは当然理解していますが、まぁ正論振りかざすよりラクできるならラクしちゃえばいいんでないの、と思います。

黒ひつじくん
黒ひつじくん
ところで、わざわざ意見書出したり総会にやってきてまでこういう侮辱的というか、攻撃的な絡み方をしてくる人の日常生活ってどんな感じだろうと想像したことはありますか?

あなたが「何コイツ、ウザ。」って思うように、プライベートでも多分まともに相手してくれる人がいないんですよね。その結果、自分に自信が無くて変に拗らせてる。

だからこういう意見がきたら十中八九「寂しいかまってちゃん」だと思って良いです。

で、そういう人は普段誰にも話を聞いて貰えないので、ちょっと静かに話を聞いてうんうんそのとおりですねとか相槌を打ってあげるだけで感動してくれるので味方にするのがラクなので私はそういう付き合い方をするのですが、多くの人は「何コイツ、ウザ」が勝っちゃって我慢できずにケンカに…

なかむー
なかむー
「説明不足」という意見については、そもそも建替えといった特殊な議案を除いて事前に説明会をしなきゃいけないというルールなんてどこにもありません(標準管理規約準拠のマンションであれば)。

仮に本当に説明が足りなかったとしても、議案に納得がいかないなら組合員は反対票を投じれば良いだけのことであって、更に説明が必要かはその結果を受けて理事会が考えることですから、説明が不足しているかどうかや理事長が不誠実かどうかなんて論じる必要が無く「あぁそうですね、すみません」で良いと思います。

黒ひつじくん
黒ひつじくん
普通の人はよほど腹に据えかねることが無い限り、わざわざ理事になって決定を覆すような議案を上程したり、訴訟したりしないですが、その「腹に据えかねること」の多くは「あいつの態度が気に食わない、あいつを痛い目に合わせてやりたい」みたいなものであることが多いです。

先ほどお話ししたように、そういう絡み方をしてくる人は誰かにかまってもらうのが目的なので、中途半端に突き放すと余計に粘着してくることも多い。

私の先輩で意見書に対して赤ペンで殴り書きで添削して「お前の言っていることはちゃんちゃらおかしい」とかボロクソに論破して掲示板に貼り出して鎮圧した理事長がいましたが、ご本人のキャラクターに依存するところが大きく、ご家族も一緒に暮らしているならあんまり万人にはおすすめできないかな…ご本人は戦闘民族で苦にならなくても、奥様は耐えられなくて「もうやめて…」とかこの業界にいるとしばしば遭遇しますので、基本的には適度に「一歩引く」という対応が無難です。

なかむー
なかむー
いずれにしても状況次第で、実務上は過去からの組合の文化や理事会の雰囲気、相手の実力や理事長自身のキャラクターなどもろもろ勘案して対応は変えてます。

あそこのマンションの理事長がこの方法が正解だと言っていたから自分もその方法でやるというのは危険だと思います。

客観的事実に基づき説明できることは説明する

理事会 侮辱的 意見

少々のことなら聞き流せば良いとはいえ、例えば「修繕積立金を上げなくても資金は不足しない」とか、既に壊れているものに対して「この工事は必要ない」とか、既に前年度の総会で決定していることを「やるべきではない」とか、客観的事実に基づき説明できるものは説明しましょう。

「反論」ではなく「説明」です。

 

目的はその意見を出してきた人ではなく、周りで聞いているその他大勢のゆるーい支持を取り付けることなので、語り掛けるのは「その他大勢」に向けてです。

 

議場での発言でも、投書に議事録などで回答するときもですが、個人のお気持ちなら聞き流す、明らかに事実に反することはその他大勢に向けて説明するようにするのがポイントです。

なかむー
なかむー
組合運営においては、意見を出してきた1人よりも、その他大勢の組合員がどう思うかが非常に重要です。

個人のお気持ちのようなものは反論しようにもこちらも相手を否定する決め手を欠きますし、自分は個人のお気持ちだろうと思っていたら実は多くの組合員がそう思っていたとかで読み間違えると反論しようにも決め手がないのであっという間に失脚しかねません。

一方、客観的に説明が付くものであればその他の組合員に説明して味方に引き入れやすいですから、そちらに論点を絞って話をするようにしましょう。

独裁成功のカギは如何にして多数派を確保し続けるかにかかっていることを忘れないようにしてください。

黒ひつじくん
黒ひつじくん
侮辱的な言葉を他人にぶつけてはいけないというのは当然のことですが、その当然のことができない人というのは世の中に一定数いて、組合運営やってるとそういう人からう○こ投げつけられたみたいなことはもう避けようがないんですよね。

だったら、そういうのは組合員の支持を取り付けたり、上手く懐柔したりに利用すればいいよねというのが私のスタンスです。

絶対に譲れない肝心要以外は戦略的に手放す

理事会 侮辱的 意見

独裁型の理事長が足を引っ張られるパターンの多くがここができていないからではないかと思うのですが、独裁型といっても多数決の原理からは逃れようがないので、絶対に譲れないキモの案件以外は戦略的に手放してきちんと組合員の意見を聞いているように演出してゆるーい支持を取り付けたり、かまってちゃんを懐柔するのに利用した方が効率が良いです。

 

特に先ほどお話した「かまってちゃん」を手なずけるには、何か手柄をあげてよしよししてあげて満足させる必要がありますから、枝葉末節のどうでもいい案件では積極的に譲歩してあげるのがコツです。

3年くらいフロントをやるとコツが掴めてくる、まぁなかなかの高等技術ではありますが、これができるとどんな組合でもだいたい思い通りに議案を通せるようになります。

 

また、一般の組合員向けには、特に生活密着系の共用部分の利便性等は支持率に直結しますから、できるだけ対応してあげた方が無難です。少々カネがかかっても後から利用料や修繕積立金で回収すればええやんけ

仮にその場はゴリ押しで全て自分の意見が通せたとしても、あまりにも他人を斬り伏せすぎると溜まった鬱憤が数年後に爆発して仲間を引き連れて反撃…なんてことは本当によく起こります。

自分の意見を持つのは大切ですが、その案件は本当に自分の意見を通さないといけないほど重要なのか、というのは常に考えることをお勧めします。

黒ひつじくん
黒ひつじくん
ここはホントーに大事。独裁のコツは譲歩譲歩&譲歩です。

自分が本当に大事な案件をグリップするためにも、枝葉末節は戦略的に・積極的に譲歩して利用しましょう。

それで改革が成し遂げられるなら安いもんだと私は思っています。

顧問としてのスタンス|理事会(理事長)とその家族の安全が最優先

理事会 侮辱的 意見

これまでのお話の要点をもう一度おさらいすると、

  • 多くの無関心層から「ゆるーい賛成(支持)」を取り付ける(=絶対的な支持でなくとも「まぁ、やってくれるなら任せるよ」くらいの支持を取り付ける)
  • 細かい事を言って絡んでくる(侮辱的な・建設的でないことを言ってくる)かまってちゃんの懐に入り込んで懐柔する

これが独裁成功のカギですから、侮辱的な意見がきたらこれらを念頭に上手く利用できるかが勝負。

どうして私がこういう戦略を取るのかというと、もちろんそれが最もコスパが良いと思うから、というのと、そこが理事長の生活の本拠だからというのもあるのですよね。

 

管理会社時代からですが、この業界でお仕事をしていると、ほんの少し、誰かが侮辱的な言葉を吐いたところから、お互いヒートアップして後戻りできなくなり、夜に相手の家に押しかけていったりしてご家族の方が耐えられなくなって退去することに…というケースに遭遇したのは一度や二度ではありません。

皆さん家族もいて、そこに暮らしているんですよね。

 

で、どんなに理事長の方が正論であったとしても、残念ながらこの世の中には本当にアタマのおかしいやつも一定数いるんですよ。

 

数年前までマトモだったはずなのに、加齢による衰えから本当におかしくなってしまった人も見てきました。

 

そういう人もいることを考えると、理事長がそういうリスクを背負ってまで正論を貫くことも無かろうと思ってしまうんですよね。

 

もちろん、それでも構わん、上等だよ返り討ちにしてやるというタイプの方もいるので、ぶった斬っても間違いではないと思いますが、この仕事をしていて、拗れに拗れたバッドエンドを何度も見ている私としては、喧嘩上等みたいなのはあまりおすすめできないのです。

なかむー
なかむー
なので、理事長や理事長をサポートする理事さんには少々手間や苦労を強いることになりますが、可能な限り「上手に独裁する」方向性をお勧めするのが私の顧問としてのスタンスです。

他人は変えられないけど、他人に合わせて自分の立ち回りは変えられます。

黒ひつじくん
黒ひつじくん
最後に補足をすると、今回のお話は「独裁型」で運営することが前提です。

もし、理事長以外にも主体的に参加している理事が何人もいて、議長型の運営をしているのであれば、逆にその1人のおかしな人に付き合い過ぎると理事長は良くても他の人がイヤになってしまう…ということもありますので、そういう場合は逆に多数決でぶった斬るという判断が最善というケースもあります。

人間が絡むことなので、冷静に状況を見極めて対応するようにしてください。

おわりに

今回は、理事会(理事長)に対する侮辱的な意見にどう対応するべきか、というお話をしましたが、いかがでしたでしょうか。

 

なんで今、このテーマを書こうと思ったかというと、今までフロント(=無関心組合でリーダーシップを取る)の立場でやってきたことが、管理組合顧問(=理事長というリーダーは別にいて、その補佐をする)の立場だと、なかなか同じようにはいかないなー、と思うことがちょこちょこ出てきたから。

 

顧問という立場だと、今まで自分がやっていたことを理事長さん自身にやっていただくことになるのですが、これがそう簡単にはいかない。

 

本文でお話したとおり、独裁成功のカギは

  • 多くの無関心層から「ゆるーい賛成(支持)」を取り付ける(=絶対的な支持でなくとも「まぁ、やってくれるなら任せるよ」くらいの支持を取り付ける)
  • 細かい事を言って絡んでくる(侮辱的な・建設的でないことを言ってくる)かまってちゃんの懐に入り込んで懐柔する

この2つが全てだと思っているのですが、この2つって誰にでもできるわけではなくて、理事長さんによっては「どうして私が我慢しなければならないか」とかで上手くハマらないこともあるのですよね。

正直、多数決でバシバシぶった斬っていく方がその場はカンタンなことも多い。

 

で、思い悩みました。

自分としてはこれが最善だと思っているものは今回書いたとおりだけど、理事長さんには負担を強いることになる。向いていない方もいる。

だったらリスクも説明した上で、多数決でぶった斬ってその場を凌いでもらう方が良いのではないか。

だけどそれをやると高確率で将来に火種を残すことを私は知っている。

顧問としてどうするべきなのか。

 

そんなことを思い悩んでいたとき、管理クラスタの大先輩・ミッキーさん(https://twitter.com/micky_enu)に思い切って相談してみると、こんな答えが返ってきました。

 

「もちろん自分自身で理事長をやるのと顧問では立場は違うが、組合のためになると思ったことを選択するしかないだろう」

 

言われてみればそのとおりなのですが、迷っていた私にはぶっ刺さりました。

私がブレちゃいけないんですよね。

 

で、私は私の意見を書こう、合わない理事長がいたらそれはその理事長に合わせればいいじゃないか、と思うようになりました。

そもそも、私にご相談をくださる理事長さんは、私にご自身とは違う能力を期待して声を掛けてくださっているわけなので、意見が違うのって考えてみれば当たり前なんですよね。

 

なので、できる限り私の意見は述べる、その上で理事長さんの考えがあるなら理事長さんが選択した道で最大限のフォローをしよう、と決めました。

 

まぁ、元々そのスタンスではあったのですが、私の目を覚ましてくださったミッキーさんには本当に感謝です。ありがとうございます。

 

最後に、冒頭でもお話ししたとおりこの話には絶対的な正解はありません。

理事長さんのキャラクターや他の組合員との関係性、その組合毎の過去の歴史によって正解は変わるはずです。

そんな中でも最も「大ハズシしない」のは今回お話した方法ではないか、と私は考えています。

皆様の組合運営の参考になれば幸いです。