消防署や管理会社から「防火管理者を専任してください」と言われて困った経験はありませんか?
「そもそも防火管理者って何?」
「マンションの理事会から防火管理者を専任しないといけないの?」
「統括防火管理者も選任するように言われたけどよくわからない」
そんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、
- マンションで防火管理者は必要か
- 防火管理者の仕事
- 防火管理者は理事会から選任しなければいけないか
- 防火管理者の任期
- 防火管理者の手当(報酬)
についてお話ししたいと思います!
マンションの規模によっては防火管理者が必要
そもそも「防火管理者」とは…
防火管理者とは、多数の人が利用する建物などの「火災による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者をいいます。
消防法では、一定規模の防火対象物(*1)の管理権原者(*2)は、有資格者の中から防火管理者を選任して、防火管理業務を行わせなければならないとされています。
*1 防火対象物:建築物や工作物など、火災予防の対象となるもの(の全体)をいいます。
*2 管理権原者:防火対象物の所有者や借受人、事業所の代表者など、管理行為を当然に行うべき者(防火管理の最終責任者)をいいます。
出典:http://www.boukan.jp/lec_info/guide.html
マンションの場合、
- 防火対象物→マンションの建物全体
- 管理権原者→マンションの理事長
となります。
つまり、一定規模のマンション(防火対象物)の理事長(管理権原者)は防火管理者を選任する義務がある、ということです。
防火対象物はその用途によって「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」に分けられますが、マンションの場合は後者の「非特定防火対象物」に該当し、原則として収容人員50人以上の場合には防火管理者の選任が必要となります。
また、防火管理者には「甲種」と「乙種」があり、乙種は比較的小規模な建物でないと防火管理者に選任できないため、これから受講される方は「甲種」を受講して資格を取得するようにしましょう。
防火管理者の選任が必要になる条件まとめ(マンションの場合)
収容人員50人以上で、
- 500㎡以上→甲種防火管理者
- 500㎡未満→甲種or乙種防火管理者
但し1階に店舗がある等の「複合用途型」の場合は
収容人員30名以上で、
- 300㎡以上→甲種防火管理者
- 300㎡以上→甲種or乙種防火管理者
⇒複合用途型に該当する場合は他にも細かい規定があるので、自分のマンションがどこに該当するかは所轄の消防署の予防課に確認しましょう!
⇒いずれにしても甲種防火管理者を取得しておけば問題ないので、とりあえず甲種の受講をオススメします。
マンションの防火管理者の仕事

防火管理者の職務としては、消防法施行令で以下の通り定められています。
- 消防計画の作成
- 消火、通報及び避難訓練等の実施
- 消防用設備等の点検及び整備
- 火気の使用及び取扱に関する監督
- 避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理
- 収容人員の管理(分譲マンションは原則として対象外)
- その他防火管理上必要な業務
⇒「消防計画」に所定の書式はありません。自治体によってはひな型があるため、それを参考に作成します。
⇒「消防用設備の点検及び整備」については、管理会社に管理を委託しているマンションでは年2回点検を実施して、問題があれば改善の提案をしてもらえるはずです。もし管理会社から報告が無ければ「消防設備点検報告書」をチェックして異常が無いか確認しましょう。
具体的には、
- 消防計画を作成して消防署へ提出する
- 消防訓練を実施する
- 消防設備を整備する(点検は管理会社や消防設備点検会社等に委託します)
- 避難に支障を来す異常がないか(避難経路の確保ができているか)確認する
という事になります。
不明な点があれば、管理会社か所轄の消防署の予防課に問い合わせて確認しましょう!
理事会から防火管理者を選任する必要は無い

マンションによっては慣例的に理事会役員から防火管理者を選任していることもありますが、消防法上はそのような定めはなく、マンションの居住者以外から選任してもOKです。
但し前述の防火管理者の職務をきちんと遂行できることが前提ですので、防火対象物(マンション)からあまりにも遠方にお住まいの方を選任しようとすると、消防署から却下される可能性があります。
以前川崎市にあるマンションで、千葉県にお住いの方を防火管理者に選任したところ消防署からも承諾を得られましたが、明確な基準は無いようで各消防署によって判断が分かれます。
マンションにお住まいで無い方を選任する場合は所轄の消防署(予防課)に確認するようにしましょう!
防火管理者に任期の定めは無い

防火管理者に任期の定めはありません。
防火管理者を変更する場合は、自治体毎に選任・解任届の様式(ひな型)がありますので、そちらに必要事項を記入して所轄の消防署に提出すればOKです☆
統括防火管理者とは

一定規模のマンションでは「防火管理者」を選任しなければいけませんが、例えば店舗がある等で管理について権原が複数に分かれている場合、「統括防火管理者」を選任しなければなりません。
統括防火管理者の選任が必要になる場合(管理について権原が分かれている場合)
- 高層建築物(高さ31mを超える建築物)
- 避難困難施設が入っている防火対象物のうち地階を除く階数が3以上で、かつ、収容人員が10人以上のもの
- 特定用途の防火対象物のうち、地階を除く階数が3以上で、かつ、収容人員が30人以上のもの
- 非特定用途の複合用途の防火対象物のうち、地階を除く階数が5以上で、かつ、収容人員が50人以上のもの
- 地下街のうち消防長又は消防署長が指定するもの
- 準地下街
⇒自分のマンションが該当するかどうかわからない場合は、所轄の消防署(予防課)に確認しましょう。
「統括防火管理者」を専任する場合、通常の「防火管理者」の1人と兼任してもOKです。
これも細かい規定がありますので、統括防火管理者に選任しようとする人がその資格を満たしているかどうか、消防署に確認をしてみてください。
マンションの防火管理者に手当を支給するべきか

マンションの防火管理者は、原則として手当(報酬)はありません。
とはいえ、一定の責任が伴う立場ですので、総会で決議をして防火管理者手当(報酬)を支払った方が良いのではないかと思います。
ちなみに、マンションの理事会や居住者から選任せず、外部に防火管理者を委託すると月額5,000円くらいはかかります。
マンションによってケースバイケースでだと思いますが、個別の事情等も勘案して防火管理者手当(報酬)を設定してはいかがでしょうか。
マンションで防火管理者は必要かまとめ
今回はマンションの防火管理者についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
必ずしもマンションの理事会や居住者から防火管理者を専任する必要はありませんが、一定の条件に該当する場合はどなたかを防火管理者に選任する必要があります。
まだ防火管理者を専任していなかったり、自分のマンションが防火管理者を専任しているかわからない場合は、一度理事会で話し合ってみてはいかがでしょうか?