マンションを購入すると毎月支払うことになる修繕積立金。
この修繕積立金について、国交省のガイドラインがあるのはご存知でしょうか。
「修繕積立金ガイドラインってなに?」
「修繕積立金の残高の目安ってどれくらい?」
「目安の額って妥当なの?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、
- 修繕積立金ガイドラインとは何か
- 修繕積立金の残高の目安
- 均等積立方式と段階増額積立方式
等についてお話ししたいと思います。
修繕積立金ガイドラインとは?
国土交通省が作成したガイドラインで、マンションの修繕積立金に関するガイドラインが正式な名前。
全部で20ページなのでご興味のある方はさくっと読んでみてください。
このガイドラインの話をするにあたり、修繕積立金と長期修繕計画書は切っても切れないのですが、両方書くと長くなるので長期修繕計画作成ガイドラインについてはそのうち書こうかな…
さて、修繕積立金ガイドラインについて簡単にお話ししますが、このガイドラインのポイントをピックアップしておくと、
- マンションを購入したら修繕積立金の知識は必須だからきちんと理解してね
- 修繕積立金をちゃんと積み立てないと将来お金が足りなくなるよ
- 修繕積立金は共用部分の修繕に使うものだから専有部分の修繕費用は各自で貯めてね
- 修繕積立金は長期修繕計画書に基づいて設定するからそちらも見てね
- マンションの規模ごとの修繕積立金の目安はこれくらいだよ
- 修繕積立金の積立方法は均等積立方式が望ましいです
という話がされています。
修繕積立金残高の目安は?
修繕積立金の残高の目安は、現在の築年数や規模だけでなく、どのような設備が付いているか、次の大きな工事はいつ頃か等に左右されるので、一概に〇〇円あればよいという金額はありません。
ただ、中古で購入を検討する場合にこのマンションの修繕積立金が大丈夫かどうかをざっくり判断する方法はあって、
- 長期修繕計画書を見て、次の大きな工事(大規模修繕工事、給排水管の更新、エレベーターの更新等)がいつ頃になるか調べる
- 収支報告書を見て、現在の修繕積立金残高と年間積立額を調べる
- 「次の大きな工事」の工事金額を、【現在の修繕積立金残高+(年間積立額×大きな工事までの年数)】が上回っていればとりあえずは大丈夫
という方法でチェックできます。
また、国交省の修繕積立金ガイドラインによれば、修繕積立金の計画(長期修繕計画)は新築時から30年先まで考えて作るということになっていますが…
修繕周期だけならある程度計画が立てられますが、工事単価を読み切るのはほぼ不可能。
というのも、長期修繕計画書の工事金額って、建築設備工事の積算ハンドブック等から単価を拾って、それに図面上の数量や面積を掛けて算出していくのですが、この金額が近年爆上げしていて、例えば足場仮設の単価がほんの数年前から1.8倍くらい上がっていたり…
その上、消費税は2019年10月現在で10%、山本太郎が総理大臣にでもならない限りまだまだ増えていくのは間違いない。
なので、一旦は30年後(もっと先まで作れるならもっと先)までの計画を立て、そこに合わせて修繕積立金を値上げしてしまい、数年おきに実績等も見ながら少しずつ修正していく、というのが良いでしょう。
均等積立方式と段階増額積立方式
均等積立方式と段階増額積立方式とは何ぞや?という点については上にリンクを貼った「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で詳しく解説されているのでご一読を。
ざっくり言うと、前者は「向こう30年くらい先を見越して毎月の積立額が一定になるようにする」方式で、後者は「数年毎に徐々に値上げをしていく」方式。
で、国交書の結論としては均等積立方式が望ましい、とされています。
但しこれには注意が必要で、修繕積立金ガイドラインの15ページにも書かれているとおり
- 区分所有者が自ら居住する住居専用の単棟型のマンションの長期修繕計画
- 専有床面積の平均が 55 ㎡以上のマンションの長期修繕計画
であることが前提。
何が言いたいのかというと、人に貸したり転売したりして収益を上げることを目的としている人が多い投資用マンション等ではまた事情が違ってくるわけです。
このあたりをネタにしたがりべんさんとハルミズムさんの高尚なブラックジョークがこちら。
??「均等積立なんて何で提案すんだよ
大規模修繕前にexitする予定なのに利回り悪化させんなよ他のマンションの大多数が積立金放置してんだから、うちも放置してもらわんとイコールフッティングにならねえんだよ!」
— がりべん (@garibenZ) September 30, 2019
??「修繕積立金はコストじゃなくて貯金だから!貯金だからぁ!!」
— ハルミズム (@harum_ism) September 30, 2019
要するに、このマンションを【終の棲家】と考えている人が多ければ均等積立方式で話がまとまりやすいのですが、修繕が必要になる前に売り抜いて売却益を得ようという考えの方からすると貯金というより費用という感覚になりやすく、合意を得ることが難しくなるわけです。
「分譲時の長期修繕計画書追認に関する件」の議案書に小さく「計画に沿った修繕積立金の積立についても併せてご承認ください」とか書いてそーっと値上げするしか…
修繕積立金ガイドラインの金額の目安は妥当なの?
そもそも、ガイドラインに記載されている「修繕積立金の額の目安」って何ぞや?というところから。
ここでいう「目安」とは、
国交省の「長期修繕計画書作成ガイドライン」に沿って①長期修繕計画書が作成されているマンション(84事例)において、②新築時から30年間に必要な修繕工事費の総額を、③新築時から積み立てると仮定した場合に必要な金額(月額)です。
順にみていきましょう!
①長期修繕計画書が作成されているマンション(84事例)
これは特にツッコむところはないかな…
統計はプロではないので何とも言えませんが、84事例からある程度外れ値を除いた後の平均値なので、まぁ妥当なのでは?といったところ。
②新築時から30年間に必要な修繕工事費の総額
ここは一応触れておきます。
一般的に大規模修繕工事は12年周期で作成されていることが多く、仮に12年周期だと計画期間の6年後の第36期に3回目の大規模修繕工事が隠れていますが、この修繕費用が考慮されないことになります。
といっても36年後の工事金額なんて読みようがないのは先ほど述べたとおりで実際には大した問題ではないです。
新築から何年か経ったら長期修繕計画書を見直して、その時に計画しなおせばOKです。
③新築時から積み立てると仮定した場合に必要な金額
これは要注意で、飽くまでも「新築時から」積み立てた場合を想定しています。
ほとんどのデベロッパーは分譲時に不当に安い金額に修繕積立金を設定しているのは前回お話しした通りで、大半の組合は早くとも第3期~第5期からの値上げとなります。
すると、新築時~値上げした期までは「目安の額」よりも少ない金額であったわけで、その分を上乗せしなければ積み立てが間に合いません。
なので、ガイドラインの「目安の額」が妥当かと言われると、「ある程度妥当な金額ではあるけど、もうちょっと高めに設定した方がいいんじゃないかな」といったところ。
当然それぞれのマンションの個別の事情で変わってきますので、あくまでも参考程度に考えましょう!
修繕積立金ガイドラインについて解説まとめ
今回は国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」についてお話しをしましたがいかがでしたでしょうか。
必要な修繕積立金の金額はマンションによって変わってきますので、ガイドラインは一つの目安と考えていただくのがよろしいかと思います。
まずは管理会社や設計事務所に依頼して自分のマンションの実態に合った長期修繕計画書を作成し、必要な金額について検討してみてくださいね!