2025年7月30日に公開された「マンション修繕積立金、月2万円超えは“搾取”!「月1万円あれば価格が下がらない」業界関係者が明かす不都合な真実」という記事。
正直なところ、またいつものゴシップ記事か…という感じなのですが、記事を読んだ方の中には
- 修繕積立金は上げない方が良いのでは?
- やる気のある誰かに立候補させてタダ働きさせればいいのでは?
- 管理会社より工事コンサルに任せた方が良いのでは?
などと不安に思ってしまう方もいらっしゃるはず。
今回はそんな不安を払拭するべく、記事の内容について一つずつ解説していきたいと思います!
コメントしている人の立場
各論の前に、まずは記事にコメントが登場する方々の立場について。
- スマート修繕
…↓のHPにあるとおり「工事会社の紹介」をする会社。
- 須藤桂一氏
株式会社CIP代表。↓HPの通り「大規模修繕工事支援サービス」を行ってます。 cip.co.jp/works/
要するに、管理会社と競合する立場です。
この会社がどう思っているかは知りませんが、私がその立場であれば「管理会社に不信感を抱いて問い合わせが増えたらいいな」と思っても不思議ではないかなと。
多くは語りませんが、そういうポジションの方がコメントを出している記事である、という背景を押さえた上で読むべき記事だと思います。
最も問題なのが、管理会社?
次に各論について。
記事中「最も問題なのが、管理会社だ」とありますが、「プロにとっては非常にだましやすく、お金になる」というのは外部コンサルにも同じ事が言えるはずです。
何故、外部コンサルは大丈夫で、管理会社はダメなのでしょうか。
このような言説は何度も見聞きしていますが、未だに明確な根拠を提示できる人を私は見たことがありません。
また、「『理事会支援』の大義名分」とありますが、単に管理組合と接点を持ちやすく、営業をかけやすい立場にあるというだけで、このような記事をきっかけにして問い合わせが入り一度接点を持てば外部コンサルも同じ事ではないでしょうか。
管理会社の工事営業が維持費高騰を招く?
「自社の営業目的の“サポート”のため」とありますが、「マンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整」はマンション管理適正化法第2条1項六号に記載のある「基幹事務」であり、国交省の「標準管理委託契約書」にも記載があります。
要するに国も管理会社が実施することを想定している業務です。
これを問題だというのは、マンション管理の基本がわかっていないと言わざるを得ないと思います。
- 管理組合の会計の収入及び支出
- 出納
- マンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
この3つを指すと定められています。
つまり、これらの「基幹事務」はその名の通りマンション管理の肝心要であり、法律上も管理会社がこれをサポートすることを想定しているわけです。
管理会社の見えない手数料が高すぎる?
記事中、「見えない手数料が高すぎる」とありますが、この記事の後半では「信頼できるコンサル」とは「日常の管理コストの削減提案」をしてくれる会社だと筆者は述べています。
「リベートなしに成り立たない」と記事の中で述べているにも関わらず、日常の管理コストを削減して、どう成り立たせるのでしょうか。
管理会社はボランティアではありません。
それとも、管理会社は悪だから世の中に不要とでも言うつもりなのでしょうか。
立候補制でやる気のある人に頼むべき?
「理事会役員を立候補制に変えて、やる気のある人に知見を蓄積してもらいつつ、頼むべき。中規模以上のマンションであれば、候補者がいないという状態にはなりにくい」とありますが、本気で言っているのかと目を疑ってしまいます。
立候補制を採用すべきだというのはそのとおりだと思いますが、それは輪番制との併用が前提。
もっと言うと、輪番制だけでは拘束力がない(辞任は自由なので、輪番で就任しても「辞めます」と言えば辞められてしまう)ので、協力金規定等も絡めて対応しないと制度上公平性を保つことは困難です。
更にこの記事のように外野から「素人」「無知」等と蔑まれてまでタダ働きしたがる人なんてそうたくさんいるわけがなく、輪番制や協力金制度と併用しなければ、断り切れなかった人か、或いはじゃんけんやくじ引きで負けただけの人が理事になるのが現実です。
「無関心」が「談合・リベート」の元凶なのではなかったのですか?
不適切なリベートスキームが平常運転?
「不適切なリベートスキームをビジネスとして平常営業でやっている」とありますが、近年、大手管理会社は予め管理委託契約書に手数料を請求できる旨記載し、見積書にも具体的な金額を明記するようになっています。
焼畑コンサルが付き合いのある中小管理業者はそうなのかもしれませんが、工事金額の透明性(高いか安いかは当然別論点ですが)を求めるのであれば大手に委託すればいいでしょう。
管理会社を通さず住民側が独自に業者を探せ?
「管理会社を通さず、住民側が独自に業者を探す」とありますが、管理会社が負担するコストを住民に転嫁している(=誰かにタダ働きさせている)のだからその分安くなって当たり前です。
「管理会社と取引のない業者を選ぶ」という事は、探してきた人が責任を持つ(今まで管理会社が負っていた責任を、組合員である理事個人に負わせる)という事です。
ご自身でやるならまだしも、他人任せなら無責任と言わざるを得ません。
また、「管理会社と取引のない業者」ということはつまり、「普段分譲マンションの仕事に慣れていない業者」という可能性が高いです。
不慣れな業者に頼めば不測のトラブルが起きる可能性は上がります。
こういうリスクを組合員に押し付ければよい、という考え方はいかがなものかと思います。
管理会社主導是正のために外部コンサルが選択肢?
焼畑コンサルを推奨?
先日正にそのような経緯で入ったと思われる地場業者と適正化診断の期日のやり取りをしましたが、日程調整のメールすらきちんと返信できない、向こうから日にちを提案してきたのでその日でOKですと確認のメールまでしたのに当日すっぽかし、現場から電話をしたら「日程決まってないと思ってて…」等と言い放ち、挙句の果てには「約束をすっぽかしたこと」が問題なのに「理事長からまだ書類を貰えていなくて」などと論点をすり替え、こともあろうか理事長のせいにしようとする始末。理事長から書類を貰えていないなら「事前に」まだ貰えていないとリスケの連絡をすればいいでしょ。
しかも、このやり取りの間、唯の一度もお詫びの言葉もありません。唯の一度も、です。もはやホラー。
これは直近の一例ですが、このような被害にあっている組合がたくさんあります。
こういった状況でお困りの組合様、是非一度お問い合わせフォームからご相談ください。
競争原理を導入?
「競争原理を導入できれば」とありますが、今は令和です。
平成デフレ期ならいざ知らず、今は売り手市場ですから、立場を弁えずそんなことをしたらマトモな管理会社は競争などせず撤退します。
そうなったら誰が尻拭いをするのでしょうか。 また「やる気のある誰か」ですか?
善意でやってくれる人がいるのは素晴らしいことですが、それは他者が要求するものではないし、他人の善意頼みというのはちょっと無責任では?と思うのです。
修繕積立金の値上げがナンセンス?
「積立金の値上げ」と「談合・リベート構造を脱すること」は全くの別論点であり、並列して語ることこそナンセンスです。
また、談合・リベート問題はいわば悪魔の証明ですが、どうやって「脱した」かどうかわかるのでしょうか。
計画修繕工事を実施するのは10年後、20年後、或いは30年後かもしれませんが、その時に(仮に費用の高騰が談合・リベート構造のせいであったとして)「談合・リベート構造に陥っていない」という前提はどのように確保するのでしょうか。
「やる気のある誰か」を、10年後、20年後、或いは30年後も働かせろということでしょうか。
もしかしたら「やる気のある誰か」がその時もいるのかもしれませんが、まぁ私には随分と楽観的だなと思えます。
事後保全で我慢すれば良い?
「弊社が入居する銀座のビルは築60年超ですが、まだ1度も大規模修繕をしていません。屋上防水も一度もリニューアルせず、問題が起きそうな場合に修繕する、『事後保全』のスタンスです。本来、不動産は乗り物と違って、問題が起きた後でも、数日、我慢すれば原状回復するケースがほとんどです」
という、須藤氏のコメントが掲載されています。
HPで調べたところ、銀座二丁目の「第一吉田ビル」のことのようですが、ここはワンオーナーのビルですよね。
ワンオーナーなら分譲と違ってオーナー1人が全て責任を負うのですから、事後保全でも構わないでしょう。カネを払う(払わない)のもオーナー、何かあったとき責任を負うのもオーナー。
が、多くの区分所有者の共有状態で、運営の舵取りをする理事会のメンバーも輪番でガラッと入れ替わり、その理事会も専業でやっているわけではなくみなさん本業がある…という区分所有特有の事情があって、予防保全や、大規模修繕工事というパッケージングされた発注形態を取らざるを得ない、という現実があるわけです。
分譲マンションの場合はそういった現実も踏まえて判断するべきで、ワンオーナービルの事情をそのまま当てはめるべきではないと思います。
異常が出てから修理すれば良い?
「異常が出てから修理や買い替えを考えても遅くない」とありますが、私は実際に増圧ポンプを発注してから納品まで1年半かかった組合を知っています。
また、分譲マンションの多くは記事でも述べられているとおり「輪番で当たった誰か」が管理者を務めるわけですが、万一ライフラインである水が止まったときに貴方が管理者だったら、責任を取れますか?
その責任を誰も個人では負えないから、分譲マンションでは「予防保全」を採用するケースが多いのです。
これが「事後保全」です。
外壁修繕が大きな問題?
「工事を“万が一の事故対策”として管理会社らが住民に勧めて、そのリスクを作業員と通行人に転嫁し、自身はリベートを得る、というのは大きな問題だろう」とあります。
外壁については、平成20年国土交通省告示第282号でおおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととされていて、管理会社が儲けるためだけにやっているわけではありません。
国が公式に「やれ」と言っているから管理会社は提案しているわけで、その工事を勧めることを「大きな問題」と言ってしまうのは、なんというか浮世離れにもほどがあると思うのですが…
ダイヤモンド・オンラインの記事に物申す!不都合な真実まとめ
今回は2025年7月30日に掲載されたダイヤモンド・オンラインの記事について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
言っていることはわかるんですよ。
誰だって自分だけは得したい(損したくない)し、安いなら安いに越したことはない。
私も依頼されれば工事会社を紹介しますし、直接見積もりを取れば管理会社の見積より20~30%は安くできます。
但しそれをもって管理会社が不当にマージンを取っているかと言えば、私はそうは思いません。
工事に携わってみればわかりますが、現場では事前の現地調査でも把握しきれない「想定外」がよく起こります。
図面と違う、既設の他設備と干渉して追加工事が必要、所轄官庁の指導で追加工事、現場と顧客意向の認識のズレ、職人の未熟さに起因する再施工、お客さんが納得せずやり直し等々…挙げたらキリがありませんが、こういった「想定外」が一度起こると利益なんて一瞬で吹き飛びます。
これがスポットで工事を請けた(組合と継続的な付き合いが無い)工事会社であれば「しらんがな」で逃げることもできますが、継続的な付き合いがある管理会社はそうはいきません。
そんなことをしたら肝心の管理委託契約を解約されかねず、そういった「想定外」があったとしても、血反吐を吐いてでも現場を納めなくてはなりません。
そんな極めて大きなリスクを背負って見積書を提出するのが「管理会社の工事」なのです。
そういったことをわかっていれば、競合である管理会社を槍玉に上げて分断を煽って誘導する手口は本当にいかがなものかと思いますし、もっというと本来であれば管理会社が背負っている大きなリスクを「組合員の誰かがやれば安くなるよ」と『外部の人間が』焚きつけ、押し付けるのは問題があるのでは、と私は思っています。
繰り返しますが、理事会の側から、「俺たちが責任持つから安くしてくれ」と言う分には全く問題ないどころか素晴らしいことだと思いますし、私もそのような相談をされたら見積取得の協力をします。
ただそれを、外部の人間が焚きつけて押し付けるのは、自分だけ安全な場所から無責任じゃないかな、と思うのです。
この違い、わかりますかね。
冒頭で、コメントを出している方々のポジションを明らかにしましたが、私のこの主張も多分にポジショントークです。
私も、管理組合運営の円滑化に重きを置いたコンサルというポジションからの主張をしているにすぎません。
いささかとりとめのない話になってしまいましたが、多くの組合員の利害や思惑の絡むマンション管理では、多角的な視点をもって判断することが肝要です。
短絡的な二元論ではなく、その組合ごとの事情に応じてご判断いただけると幸いです。