マンションで生活していると、フロントさんや管理員さんへのちょっとした対応への不満などから 、管理会社を変更したい!と思ったことはありませんか?
「管理会社が不親切なので変更(見直し)したい」
「管理会社を変更したいけど、デメリットや失敗例はあるの?」
「管理会社変更を失敗しない選定基準ってあるの?」
そのような疑問をお持ちの方も多いはずです。
そこで今回は、
- 管理会社変更(見直し)のリスクやデメリット
- 管理会社を変更(見直し)する前に
- 管理会社を変更(見直し)する際の選定基準
などについてお話ししたいと思います!
管理会社の変更は失敗のリスクが伴う
管理会社変更を考えるにあたり、最初にお伝えしておきたいことが1点あります。
それは、「隣の芝生は青く見える」ということ。
彼女とケンカした時とか特に、他人の彼女が可愛く見えたりしませんか?
あれと一緒です。
明確に「この管理会社はこの業務の能力が高いから」というような理由もなく、漠然とした不満で安易に管理会社の変更(見直し)をするのはかなり危険です。
後程管理会社変更(見直し)の選定基準などをお話ししますが、まずは変更(見直し)のデメリットをいくつか挙げていきます。
管理会社変更のデメリット①引継ぎ

管理会社を変更(見直し)する時、結構重要なのが引継ぎです。
新しい管理会社の営業担当者は「引継ぎチェックリストがあるので、確実に引継ぎします!」と頼もしい説明をしてくれますが、それはハード面(図面や議事録等の書類)の話。
ハード面はきちんと引継ぎできても、
- 〇〇さんと△△さんは昔こんなトラブルがあって仲が悪い
- 奥様達の要望で掃除の手順等を変えてもらっている
- ××さんは過去総会である議案に反対意見を出していた
- 昔□□さんとトラブルがあった時、◎◎の対応を落としどころにして収めた
といったいわゆるソフト面の引継ぎを漏れなく確実にするのはかなり難しい。
何故かというと、契約云々の話ではなく現場のフロントさんや管理員さんが内々で処理していてしかも当事者の中では「当たり前」「過去の記憶」になってしまっているので引継ぎの時に思い出せるとは限らない。
そして管理会社は解約(変更)が決まるとドライに粛々と契約内の業務だけをこなすようになります(当たり前ですが)。
その状況でチェックリストに無い(引き渡す義務が無い)ことまで懇切丁寧に引継ぎをしてくれる管理会社のフロントさんはなかなかいません。
管理会社変更のデメリット②フロントさんの質

管理会社の変更をする際、多くの場合は従前の管理会社よりも管理委託費が安くなっていると思います(そもそも委託費減額が目的のケースも多いと思います)。
では、新しい管理会社は何故管理委託費を安くできるのでしょうか?
安くできる理由は次の3つ。
- フロントさんの人件費が安い(契約社員)
- 1人あたりの担当棟数が多い
- 諸々の業務が別契約になっている
③については後述しますが、管理会社が委託費を安くできる大きな理由は①と②、つまりフロントさんの人件費を下げ、更にたくさん仕事をさせているから安いんです。
給料だけで人の価値を測ることはできませんが、優秀な人材を同業他社より安く雇用するのは無理ですし、仕事量が増えれば当然パフォーマンスが下がります。
そして管理会社変更のプレゼンに来る方は実際に担当になるフロントさんではなく、ベテランの営業部長+エース格のフロントさんという組み合わせが非常に多い。
どんなにプレゼンがうまくても、管理委託費が安ければエース格の優秀なフロントさんが付く可能性はかなり低いということは覚悟しておきましょう。
管理会社変更のデメリット③サービスの低下

ご自分のマンションの管理委託契約書をしっかり読んだことはありますか?
もっと言うと、今フロントさんや管理員さんがやってくれていること、全て当たり前だと思っていませんか?
- 来客用駐車場の使用料等の現金預かり
- 総会会場の予約や設営
- 管球交換
- 自治体からの広報の配付
- 分別されていないゴミの仕分け
- 資源集団回収の報奨金の請求書類の記入・提出
- 雪かき
- 管理員さんによる樹木の剪定
等々…
これ、契約書に書かれていなかったり、管理会社によっては別契約になっていることが多いです。
要するに、フロントさんや管理員さんが善意でやってくれているわけですね。
新しい管理会社に変更(見直し)した途端に、
「契約外なのでウチではできません。組合さんでやってください」
と言われるなんてことはザラにあります。
今の管理会社にはちょっと不満がある…という事もあるかと思いますが、そのちょっとの不満を解消するために多くのサービスを失う、という事にならないよう注意が必要です。
管理会社変更のデメリット④住民の関係悪化

管理会社のフロントさんや管理員さんも、建て前はすべての住民に平等に接することになっていますが、そこは人間ですから付き合いが長くなれば住民の中に「ファン」が付いていることはよくあります。
今の管理会社に不満がある人がいれば、反対に管理会社を変えたい(見直したい)と思わず、むしろ気に入っている人もいるわけです。
そこで管理会社を変更(見直し)した結果、サービスが低下して大失敗!なんてことになると、
「管理会社を変更したせいだ!当時の理事会は責任を取れ!」
「○○さんが管理会社の変更を強引に進めたせいで…」
となり、住民間の関係に亀裂が入る可能性があります。
管理会社変更のデメリット⑤予想外の支出が増える可能性

上記③とも関連しますが、いざ新しい管理会社に変更したら、
- 理事会への出席(年間〇回以上は別料金等)
- 議案書発送作業
- 資料印刷
- 長期修繕計画書素案の作成
- 議事録素案の作成
- コインランドリー等の集金業務(別会社に外注)
等が契約に含まれておらず、管理組合ではできないので結局別料金で契約せざるを得なくなった、ということも起こります。
管理会社を変更するときは、現行の管理会社の契約内容と、変更後の管理会社の契約内容が異なる部分を必ず確認しましょう!
管理会社変更のデメリット⑥再度口座振替依頼書の提出が必要

管理会社を変更(見直し)すると、管理費等を引き落としている集金代行会社への口座振替依頼書の再提出が必要になります。
口座振替依頼書に名前と口座情報を記入し、銀行印を捺印するだけなので
「なんだ、大した手間じゃないじゃん」
そう思われるかもしれません。
確かに、築浅のファミリーマンションならその通りです。
ところが、築30年を超えて区分所有者の高齢化も進んだマンションだとどうでしょう。
お知らせをしようにも退去届を出さないまま転居したり、介護施設に移っていたり、所有者変更届を出さないまま亡くなって相続していたりして手続きがなかなかできず、その間未収納金が増え続けていく、ということが起こり得ます。
日頃から管理組合としてきちんと区分所有者情報を把握しておきましょう!
管理会社に不満があって変更したいと思うなら
いくつか管理会社変更(見直し)のデメリットを挙げましたが、何が言いたいかというと、これだけの手間や失敗のリスクと天秤に掛けてそれでも管理会社を変更しなければいけませんか?ということを考えていただきたいのです。
「それでも今の管理会社に不満があるので変更(見直し)したい!」という方は、管理会社を変更する前にやってみてほしいことがあります。
管理会社に担当者を変更してもらう

例えば、今の管理会社に対してお持ちの不満が
- メールの返信が遅い
- 議事録素案の作成が遅い
- 依頼したことをやってこない
といった内容であれば、担当者を変更してもらうだけで解決できたりします。
あんまり名前も聞いたことが無い小さな管理会社であればどうにもならないかもしれませんが、管理戸数ランキングで30位以内に入ってくるような中堅以上の管理会社であれば会社の体質というよりフロントさん個人の能力の問題であることがほとんどだと思います。
まずは「管理組合として何が不満なのか」をまとめて、担当フロントの上席の方に交渉してみることをオススメします。
見直すべきは理事会のレベル

本当にこれに尽きます。
人の振り見て我が振り直せ。
これです。
中堅以上の管理会社なら、どんな管理会社でも支店に1人、2人はエース格のフロントさんがいるものです。
あなたのマンションの管理組合(理事会)が主体性を持ってしっかり運営されていれば、管理会社も上で挙げたようなメールの返信が遅い・議事録作成が遅い・依頼したことをやってこないダメフロントを安易に付けたりしないんですよ。
新築マンションで管理開始直後ならいざ知らず、管理開始から5年も経てばフロントさんの異動や退職で担当者が変更になるタイミングが来ます。
殆どの管理会社では「物件難易度リスト」や厳しい理事長がいる等の「ブラックリスト」があって、これらをもとに次の担当者を決めます。
要は、その組合に相応なレベルのフロントさんを付けているのです。
- 例年、理事会は年間3~4回、管理会社に言われた時だけやっている
- 理事会の出席率が悪く、流会や打ち合わせ会で終わったりする
- 総会の出席率が悪く、大半の区分所有者が委任状を出して欠席
- 消防設備点検や排水管清掃の実施率が低い
- 共用部分の使い方等、規約・細則違反が横行していてもなあなあになっている
心当たりがあるようでしたら、是非理事会(管理組合)の活動も見直してみてください。
どうしても管理会社を見直す時の選定基準
ここまで読んでいただき、それでも管理会社を変えたい、変更しなければ解決しない、という場合の失敗しないための選定基準や、管理会社のプレゼンの際に確認した方がよいことについてお話ししたいと思います。
選定基準①マンションと管理会社の支店(営業所)の距離

管理会社のフロントさん目線で見ると、マンションが遠すぎるとどうしても足が遠のきますし、緊急時の到着に時間が掛かったりします。
また、フロントさんの担当範囲もヒアリングしてみてください。
都内の管理会社に勤務していた私の知人は、千葉県の小倉台~神奈川県の小田原まで担当していましたが、これだとマンション間の移動に片道3時間近くかかります。
このような担当の持たせ方をする管理会社はフロントさんの業務量に対する意識が希薄であることが多く、フロントさんが疲弊して手が回らなくなったり、離職率が高くしょっちゅう担当者が変更になるということが起こりやすくなります。
地方のマンションの場合はそもそも近くに管理会社の支店や営業所が無いというケースもあるので一概には言えませんが、主要都市の近くなのにこのような担当の持たせ方をする管理会社は要注意です。
選定基準②契約外の項目をチェックする

管理会社によっては別契約となる業務や、契約書に記載がなくフロントさんや管理員さんの善意でやってくれている項目が必ずありますので、事前に現行の契約書を確認してそれらを洗い出しておき、プレゼンのときに
「現行の管理会社は〇〇という業務をしてくれていますが、変更後も継続してくれますか?」
「現行の管理会社は△△という業務が契約に含まれていますが、御社も契約に含まれていますか?」
と確認しましょう。
当たり前だと思っていたことが実はそうではなく、管理会社変更後に失敗したと後悔するというパターンは非常に多いので注意しましょう!
選定基準③フロントさんが同席しているか

プレゼンの際には、受注した場合に担当予定のフロントさんに同席してもらい、その方に質問をしてみてください。
特に、
- 騒音トラブルが起きた時にどう対応したか
- 漏水事故が起きた時にどう対応したか
- 総会で議案に対し猛烈な反対意見が出た場合どう対応したか
等、契約書には書かれていないフロントさんの個人的な経験について質問すると、そのフロントさんのレベルが一発でわかります。
名の知れた大手の管理会社でも「現在社内で調整中で、管理開始前には担当フロントを決めます」と言ってなかなかプレゼンに同席させない管理会社もあります。
これ、翻訳すると、
- 担当予定のフロントは客前に出せるレベルじゃないから契約締結まで出したくない
- 過重労働で手が回らなくなっているフロントばかりでプレゼンに来れない
こういうことです。
プレゼンに担当予定のフロントさんを同席させない管理会社も要注意です。
選定基準④国交省の処分を受けていないか

管理会社が重要事項説明をしなかった、管理組合の金銭を着服した等、法律に違反した場合、国交省から指示処分や業務停止処分が下ります。
検索すれば出てくるのでどことは言いませんが、グループ会社含めて何回も着服などの金銭事故を起こしているようなところは最早企業の体質の問題です。
プレゼンでは「二度と繰り返さないように対応している」「支払いはウェブ承認に移行を進めている」等と都合の良いことをいいますが、いつまでたってもフロントさんが「現金」や「払戻請求書」を触れる仕組みを改善しないのが問題です。
そのウェブ承認だって管理組合への設定方法の説明はフロントさん任せ。
何度でも金銭事故を繰り返すに決まっています。
このようなトラブルに繋がる可能性のある管理会社は避けた方が無難です。
選定基準⑤清掃の指導体制がしっかりしているか

多くのマンションでは管理員さんや清掃員さんが共用部分の清掃をしてくれていると思いますが、清掃を管理員さんや清掃員さんのセンスに任せている管理会社だと、「当たり」の方が来れば良いですが、清掃のヘタな「ハズレ」の方が来ると悲惨です。
マンションの清掃は家の掃除とはわけが違います。
共用部分の材質と清掃用具の相性等もきちんと把握しなければなりませんので、管理員さんへの清掃指導専門の社員がいるかどうか確認し、プレゼンにも同席してもらうようにしましょう。
そして、
「当マンションの清掃状況の印象と、改善点があれば教えてください」
などと質問して、清掃指導の環境が整っている会社かチェックしてみてください。
管理会社変更の失敗例

最後に、私の知り合いのマンションで実際に起きた管理会社変更の失敗例を1つご紹介します。
そのマンションは売主の子会社の管理会社が管理していましたが、当時の理事長が
「管理委託費が高い!」
といって、地元の小さな管理会社への変更を提案しました。
他の区分所有者もそこまで管理の事を深く考えておらず、
「まあ安くなるならいいんじゃない?」
という意見が多く、総会でそのまま管理会社変更が決まりました。
ところがこれが大失敗。
- 管理会社に何度電話をしても「担当者が外出中なので折り返します」と言われて折り返しが無く、担当者と連絡が取れたのは3ヶ月後
- 管理会社に駐車場を契約したいと連絡したところ、「空きがない」と言われたのに、その直後に別の人が駐車場を契約。「申し込みの順に契約することになっているのにおかしいじゃないか」と追及すると、「じゃあこちらの区画を使ってください」と言ってきた。(つまり最初から空き区画があったのにデタラメな事を言っていた)
- 毎回いつまで経っても理事会の議事録素案を作成せず、何度も催促をして数ヶ月後にようやく提出される
- 管理組合の決算書類が、以前の管理会社が管理していた時代の分は管理事務室に全て揃っているのに、管理会社変更後は一切保管されていない
- 管理員が清掃せず一日中管理事務室にいて、綺麗だった廊下もクモの巣だらけ
信じられないかもしれませんが、こんなことが本当に起こりました。
私の知人が輪番で理事長になったとき、自分のマンションの管理状況に愕然とし、このままじゃいけないということで私に相談がありました。
その後数社の管理会社によるプレゼンを経て総会で別の管理会社に変更し、現在は管理状況も改善していますが、金額だけで管理会社を選ぶととんでもないことになるということを改めて実感しました。
管理会社の変更に失敗まとめ
今回は管理会社変更(見直し)の失敗について、実例も交えてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
管理会社を変えたい、担当者を変更したい、と思った時は、理事会や管理組合の運営状況の見直しをする良い機会でもあります。
金額だけで判断したり、ちょっとした不満で安易に管理会社を変更して後から「失敗した」と後悔することがないよう、よく検討してみてくださいね~!