理事会役員の任期中に、理事の1人が売却して引っ越してしまい、困った経験はありませんか?
「理事会役員の任期中にマンションを売却できるの?」
「任期中にマンションから引っ越したら退任になるって本当?」
「理事に欠員が出た場合、追加で補充できるの?」
今回はそのような疑問にお答えするため、
- 理事会役員の任期中に売却しても問題ないのか
- 理事会役員の任期中に売却せず引っ越した場合はどうなるのか
- 理事が退任した場合の補充するべきか
についてお話ししたいと思います!
理事会任期中に売却した場合は原則退任
この記事を書くにあたり、私も「マンション 理事会 売却」でググってみました。
するとたくさん出てきました。
「理事会役員の任期中でも売却できます!問題ありません!ぜひ売りましょう!査定はこちら→」
…なるほど。
概ねこんな感じなので、どのポジションの方が書いたか大体わかりましたw
これらの記事で書かれている通り、理事会役員の任期中であっても売却はできますし、売却した場合は原則として理事会役員は退任となります。
マンションの売買をしている不動産屋さんからするとこれだけで十分なのだと思いますが、マンション管理狂いの人々からすると「物足りない」ので、もう少し掘り下げていきましょう!
理事会役員就任後に購入(相続)→売却した場合
さて、先ほど理事会役員任期中にマンションを売却をした場合は「原則」退任というお話をしましたが、例外もあります。
それが、「区分所有者になる前に理事会役員に就任し、その後購入や相続により区分所有者となった後に売却した場合」です。
マンション管理狂いで無ければ考えもしないようなシチュエーションですね!笑
「え?組合員じゃないのに理事会役員になれるの?」
そんな声が聞こえてきそうですが、なれるんです。
マンション標準管理規約第35条2項
理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
実は、区分所有法にはそもそも「理事会」という概念がないので、マンションの区分所有者が理事会役員を努めなければならない根拠はこの標準管理規約第35条2項しかありません。
と、言うことは、管理規約に「組合員のうちから」という文言が無いマンションであれば、
- 区分所有者の息子さん
- 借地に建設されたマンションの土地の地主さん
- 区分所有者の内縁の妻
こういった方々が理事会役員を務めているケースも有り得るわけです(というか実際にあります)。
で、例えば区分所有者ではない地主さんを理事会役員に選任した場合、それは「区分所有者という地位」ではなく、「不動産(マンション)の管理に精通している」というその人の「能力」に着目して選任しているわけです。
マンション標準管理規約標準管理規約第36条4項
【外部専門家を役員として選任することができる場合】から抜粋
選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合
には、その役員はその地位を失う。
そのため、区分所有者以外の外部専門家から理事会役員を選任していた場合は、その方が後から区分所有者になった後に売却して区分所有者ではなくなったとしても、それをもって役員を退任にはなりません。
理事会任期中に賃貸に出したり、引っ越した場合
さて、理事会任期中にマンションを売却した場合についてお話ししましたが、売却はしなくても賃貸に出したり、引っ越したりする場合もあるかと思います。
先ほどもお話ししました通り、区分所有法には理事会という概念が無いので、この場合は管理規約がどうなっているかによって変わります。
管理規約が「現に居住する」となっている場合
管理規約の「役員」の条文(標準管理規約だと第35条2項)が、
「理事及び監事は、現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。」
となっている場合です。
この「現に居住する」という文言は現在の標準管理規約からは削除されていますが、平成23年改正前の標準管理規約では「現に居住する」組合員から選任することとされていたため、現在もこの文言が規約に残っているマンションも数多くあります。
このような規約のマンションで、理事会役員の任期中にマンション外に引っ越した場合はその時点で「退任」となります。
尚、「現に居住する組合員のうちから、総会で選任する」という文言について、日本語の解釈として「飽くまでも『選任する時』の話であって、任期中に居住しているかどうかまでは問われていないので、退任する必要は無い」という解釈もできなくはありません。
この点について公益財団法人マンション管理センターに問い合わせたところ、
「『現に居住する~』という規約の趣旨から考えて、居住している方に理事会役員を務めていただくという事なので、このような管理規約のマンションで任期中に引っ越した場合は理事会役員を退任することになるという解釈で問題ありません」
との回答でした。
管理規約が「組合員から」となっている場合
現行のマンション標準管理規約と同じく「組合員から」となっている場合は、理事会役員任期中に引っ越し等で退居しても当然に退任となるわけではありません。
但し、遠方に引っ越してしまい理事会活動に参加することが困難な場合は、管理規約等に別段の規定が無ければ理事会役員を「辞任」することはできます。
とはいえ、突然一方的に辞任されたのでは他の理事会役員さんが困ってしまいますので、引っ越しするかもしれないという時は早めに他の理事会役員に相談し、理事の補充を行うのか、職務を他の理事に割り振るのか等について予め決めておくようにしましょう!
理事会役員が売却等により退任したら補充すべきか
理事会役員を補充するかどうかの考え方として、管理規約上の問題と実務上の問題を考える必要があります。
まず、管理規約上の問題ですが、例えばマンション標準管理規約のように「理事〇名」と定められている場合、退任により定数を満たさなくなった時は理事を補充する必要があります。
その際、「補欠の役員は理事会で選任できる」等の別段の定めが無い場合は、臨時総会を開催して理事の補充(選任)を決議しなければなりません。
また、管理規約上の理事会役員の定数を満たしている場合でも、追加で選任してはいけないわけでは無いので、理事会の職務をこなすのに人手が足りないな…と感じるようであれば立候補を募る等して臨時総会で補充(選任)の決議をしましょう。
マンション理事会役員の任期中の売却まとめ
今回はマンション理事会役員は任期中に売却できるかというお話しから少し掘り下げてみましたが、いかがでしたでしょうか。
マンション理事会役員は任期中でも売却はできますが、突然一方的に話を進めてしまうと残された理事会役員に迷惑をかける可能性がありますので、売却したり、引っ越したりして理事を退任する可能性がある時は、理事会等で早めに相談するようにしましょう♪