マンションの理事会に参加してみたいけど、役員じゃないのに参加していいものなのか迷ったことはありませんか?
「理事会の議事録を読んで納得できない部分があるので参加して話を聴いてみたい」
「理事会にオブザーバーとして参加したい」
「理事会に参加して発言を録音したいけど問題ない?」
私も年に数回、このようなご質問をいただきます。
そこで今回は、
- マンションの理事会に参加して傍聴はできる?
- マンションの理事会に参加して発言はできる?
- マンションの理事会に参加して発言を録音しても問題ない?
についてお話ししたいと思います!
マンションの理事会に参加して傍聴は認めるべき
「マンションの理事会役員をやりたくない!」という方はたくさんいらっしゃいますが、反対に「役員じゃないけど理事会に参加できますか?」というご質問も時々いただきます。
これだけ「理事会役員をやりたくない」という方が多い中でわざわざ理事会に参加したいということは、かなり好奇心旺盛な方か、業界経験者か、あるいは「現在の理事会に不信感を持っている」方のいずれかではないでしょうか。笑
さて、マンション標準管理規約第51条(理事会)には、
「理事会は、理事をもって構成する。」
とあり、理事以外の方の参加について明文化されていません。
とはいえ、「監事」は理事ではないにも関わらず理事会への出席が認められていますし、管理会社のフロントや管理員さんが理事会に参加しているマンションもありますから、「理事ではないから出席できない」とすると整合性がなくなってしまいます。
また、国土交通省告示第1288号 平成十三年八月一日「マンションの管理の適正化に関する指針」によると、
「管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。」
とされており、これらを勘案すると理事会役員でなくても参加して良いと考えるのが妥当ではないかと思います。
「べき(should)」と「ねばならない(must)」は違います。
理事会の傍聴については認める「べき」だと思いますが、認め「ねばならない」と言うには根拠が弱いかなと。
監事の役割についてはこちらで詳しく説明していますので、併せてご確認ください!
マンションの理事会に参加して多少の発言はOK
マンションの理事会への「参加」はしても良いと考えられますが、発言はできるのでしょうか。
私は管理会社のフロントをしていた時に理事長さんから、
「管理会社は黙っていてください!!」
とピシャリとやられたことがあります。笑
マンション標準管理規約第53条(理事会の会議及び議事)には、
「理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。」
とありますので、理事以外は黙ってろというのも強ち間違いではないでしょう。
ただ、理事会役員でない人が理事会に参加して、理事会の間ずっと黙っているというのもシュール過ぎますし、上述の国土交通省告示でも「…その意見を反映することにより成り立つ」とある訳ですから、多少の発言は認められてもよいのではないでしょうか。
ある程度はオブザーバーの発言を認めて意見を聴き、最終的には管理規約に基づいて理事の過半数で決定すればよいと思います。
管理に無関心なマンションの恐ろしい事例もご紹介します。
マンションの理事会のオブザーバーの役割
さて、マンションの理事会役員以外の出席者を「オブザーバー」と呼ぶことが多いのですが、その役割はどんなものなのでしょうか。
ネットでオブザーバーという言葉の意味を検索すると、「会議などで発言権はあるが議決権は無い人」、または「発言権も議決権も無い人」と解説されています。
また、語源を調べるとラテン語で「監視する人」という意味があるそうです。
…おぉー!!初めて知りました!!笑
正にマンションの理事会の参加者に相応しい言葉ですね!
というわけで、マンションの理事会のオブザーバーの役割は主に次の二つ。
オブザーバーの役割① 住民の声を伝える
同じメンバーで理事会を開催していると、どうしても声の大きな方の意見に引っ張られて、
「うーん、ちょっと違う気がするんだけどまぁいいか」
「せっかく決まりかけてるのにここで水差すのもなぁ」
と、他の理事会役員が納得できていないのになんとなく物事が決まってしまうケースがあります。
また、理事会役員が男性だけだったり、反対に主婦だけだったりというように偏った構成になっていると、住民全体の感覚から少しズレた決定がなされてしまうということが起こります。
そのような少々強引な運営や偏った運営が良い方向に作用することもあるのですが、それで生活しにくくなってしまうようでは問題です。
そんな時、理事会役員以外の住民の声を届けるのがオブザーバーの役割。
住民のフラットな視点から意見を伝ましょう。
オブザーバーの役割② 理事会をチェックする
もう1つの役割は、理事会のチェック(監視)です。
他の記事で詳しくお話ししていますが、住民の無関心は権力の腐敗を招きやすくなります。
理事会役員には一定の権力が与えられるため、周囲が無関心だとその権力を悪用して暴走しやすくなってしまいます。
「管理会社もいるし、大丈夫じゃないの?」
と思われるかもしれませんが、周囲が無関心な状況ではその管理会社との契約継続も実質理事会役員のお手盛りで決定できてしまうため、管理会社は圧倒的に弱い立場です。
オブザーバーの参加は、総会への出席と同じく理事会への牽制になりますので、時間がある時に参加を申し出てみてはいかがでしょうか。
マンションの理事会に参加して録音も原則可能
では、マンションの理事会に参加して発言を録音したいと言われた場合はどうでしょうか。
理事会の録音についてもマンション標準管理規約では明文化されていないため、過去の判例等から判断することになります。
最高裁平成12年7月12日判決では「録音自体は適法」であり、「外部に流出したり悪用された場合は別問題」との見解が示されているため、録音そのものは問題ないと解釈するのが妥当ではないでしょうか。
但し、「会話の内容を聴くことを許されている対話当事者が録音する限り、録音自体は適法」という条件付きの見解ですので、理事会外部に音声を漏らした場合は必ずしも適法とは言えなくなる可能性があることに注意が必要です。
不要なトラブルを避けるため、既に敵対してしまっているような特殊な状況を除き相手方に許可を取ってから録音するのが無難だと思います。
マンションの理事会に参加する時の注意点
ここまでは、マンションの理事会への「参加」「発言」「録音」も、ある程度は認められるであろう、というお話をしてきました。
しかしながら、理事会側も管理会社側も人間ですから、それが良いか悪いかは別問題として、「都合の悪い相手」は排除しようという心理が働きます。
単純にマンションの事をもっと知りたい、勉強したいという好奇心から参加したいということであれば、率直にその気持ちを伝えれば良いと思います。
寧ろ、理事会によってはそのような方は歓迎されるのではないでしょうか。
ところが、マンションの理事会に参加したいと考える方の中には「今の理事長のやり方が気に入らないから解任したい」、もしくは「管理会社の対応が悪いのでリプレイスを提案したい」という方が一定数いるのも事実です。
この場合、真っ正面からストレートに理由を伝えてしまうと、理事会や管理会社側は肝心の意見ではなく、都合の悪いあなたを遠ざけることばかりに無意識にフォーカスするようになり、仮に理事会に参加できたとしても建設的な議論ができなくなる恐れがあります。
また、最初から理事長の解任や管理会社の解約ありきで参加してしまうと視野が狭くなり、これもまた建設的な議論ができなくなる可能性があります。
いずれにしても、「まずは理事会でどのような話し合いが行われているのか聴いてみる」というスタンスで参加されると自分の視野も広がりますし、理事会や管理会社側に不要な警戒心を与えずに済みます。
もっと言うと、理事会の傍聴自体がナンセンスだという考えを持っている理事の方もいるということ。
理事には一定の権限が認められる一方、その決議には責任も伴います。
理事会の判断1つで、総会で責任を追及され、時には訴訟にまで発展するケースもあります。
そこまで覚悟を決めて理事会活動に取り組んでいる理事の方もいるわけですから、そういう方の前で意見を言うと、「なんの責任も無い立場から好き勝手言いやがって」と思われても仕方ありません。
発言をする際はそういう感情にも配慮が必要です。
どうしても強く主張したい場合はその場では主張せず、まずは理事になりましょう。
マンションの理事会に参加できるかまとめ
今回は、マンションの理事会に参加して発言や録音ができるかについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
マンション理事会は人と人とのお付き合いが大前提であることを心がけて、機会があればぜひ参加してみてくださいね♪