マンションでの生活で避けて通れないのが騒音トラブル。
夜間の生活音に悩まされたり、反対に心当たりが無いのに騒音だと苦情を受けた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「マンションの理事会(管理組合)で解決してほしいと言われたが解決方法がわからない…」
「騒音について何度注意しても改善しない…」
「騒音だと言いがかりを付けられたので理事会(管理組合)で何とかしてほしいと相談された…」
身近でありながら、発生すると厄介なマンションの騒音問題。
今回は、
- 騒音問題の本質
- マンションの理事会(管理組合)で騒音問題を解決する方法
- 理事会から文書を出すときの注意点
- 騒音の言いがかりを付けられたと相談されたら
についてお話ししたいと思います!
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マンションの理事会(管理組合)で騒音問題を解決するには
マンションの理事会(管理組合)に、騒音問題を解決してほしいと相談があり、困ったことはありませんか?
結論から言うと、マンションの騒音そのものを解決するのはほぼ不可能です。
というのも、マンションの騒音トラブルにおいて「その音量が大きいか小さいか」は大した問題では無いからです。
どういうことか例を挙げてみます。
おばあちゃんのテレビの音なら気にならない
私の祖母の家は曾祖母との二世帯住宅で、1階に曾祖母、2階に祖母が生活していました。
私は子どもの頃、2階の祖母の家によく泊まりに行っていましたが、1階の曾祖母は耳が遠かったのでいつも大音量でテレビを観ており、夜は2階までテレビの音が鳴り響いていました。
2階には叔母も住んでおり隣近所にも民家がありましたが、「騒音で眠れない、なんとかしてくれ」という苦情は一度も聞いたことがありませんし、私自身も「下のおばあちゃんがニュースみてるなぁ」くらいにしか思いませんでした。
かなりの大音量にも関わらず苦情にならなかったのは、祖母も叔母もご近所さんも曾祖母と日頃から付き合いがあり、曾祖母がどんな人なのかを知っていたからです。
これが名前も顔もよくわからない赤の他人だとそうはいきません。
ちょっとした物音でも気になってしまい、
「毎日毎日うるさいなぁ。上階の住人は配慮が足りない無神経な奴に違いない!」
と怒りがエスカレートしていきます。
こうなってしまうと「ウチは迷惑を被っている」という被害者意識が強くなり、加害者扱いされた側も態度を硬化させ、お互いにネガティブな感情を持つようになってしまいます。
騒音問題の本質は、「音」そのものではなく、「音を出している人との関係性」にあります。
騒音問題に対する理事会(管理組合)の立ち位置
それでは、マンションの騒音問題を理事会(管理組合)で解決してほしいと言われたら、どうすれば良いのでしょうか。
その方法を考える前に、マンションの騒音問題に対する理事会(管理組合)の立ち位置を確認しておきたいと思います。
マンションの騒音は、基本的には「個人間トラブル」ですので、理事会(管理組合)が主体となって解決すべき問題ではありません。
マンション標準管理規約第32条十二項では、管理組合の業務として
「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」
が挙げられていますが、複数の住戸が被害を訴えているような状況で無ければ個人間の問題として当事者に委ねるべきでしょう。
それでも騒音を解決してほしいという要望があった時は、
「状況は承知いたしました。ただ、基本的には個人間のトラブルですので、掲示などで注意喚起をすることはできますが、それでも解決しない場合は当事者同士で解決してもらうことになりますのでご承知おきください」
というお話をして、個人間で解決すべき問題であることをしっかりお伝えしておきましょう。
例外として、その騒音が共同利益背反行為(=複数の人が迷惑を被る行為)に該当する場合には区分所有法第57条から第60条により、訴訟の提起等の措置を取ることはできます。
しかしながら、共同利益背反行為と言えるレベルの騒音トラブルは多くはありませんし、仮に訴訟を起こしたとしても確実に解決できる保証はありません。
個人間での裁判も同様で、勝訴すればお金は貰えるかもしれませんが、どちらかが退去しなければ解決できないほど関係は悪化してしまう可能性もあることを十分理解してもらうようにしましょう。
予防を心がける
マンションの騒音トラブルは一度表面化してしまうと解決することは非常に難しくなってしまいます。
先にお話ししました通り、マンションの騒音トラブルの本質は「音を出している人との関係性」にあります。
理事会としてやるべきことは、そもそも論としてマンションというのは近隣住戸の音が響きやすい構造であることについて周知徹底しておくことと、予めマンションの居住者間の関係性を構築する機会を作っておくことではないかと思います。
具体的には、
- 「マンションは近隣住戸に音が伝わりやすい」ということを掲示する
- 騒音問題の本質は音を出す側と受ける側の人間関係の問題であることを周知徹底する
- その上で夏祭りやBBQ等のイベントを企画して積極的に交流する機会を設ける
- 入居時には上下左右の住戸への挨拶を必ず行うようにしてもらう(仲介会社への重要事項説明に追加してもらう。管理会社に依頼しておけば対応可)
- うるさいと言われる前に、近隣住戸に状況を伝えておくよう周知徹底する(「小さな子どもがいる」「耳が遠い祖父がいる」等。「ご迷惑をおかけしてすみません」と、迷惑をかける前に言ってしまう)
これらの対応をしておくと良いと思います。
何事も先手必勝、事前の対策で「予防」することを心がけましょう。
騒音に対する注意文書を出しても解決しない
騒音問題が発生すると、多くのマンションでは「生活音にご注意ください」と言った注意文書を配付したり、掲示したりするのではないでしょうか。
はっきり言いますが、騒音に対する注意文書の配付・掲示はほとんど意味がありません。
騒音問題が表面化してしまった場合の落としどころとしては使えますが、注意文書の配付・掲示をしても根本的には解決できないことに注意しましょう。
理事会(管理組合)を介して話し合いの場を設ける
それでも騒音トラブルが発生してしまった時は、そのマンションの雰囲気や特性にもよりますし、お互いに顔が見えやすい小規模~中規模マンションでないと使うのは難しい手ではありますが、理事会(管理組合)を介して話し合いの場を設けるという方法もあります。
また、当事者同士が険悪な雰囲気の場合はそれぞれ別で話を聴いて、騒音の本質は人間関係の問題であることを理解させ、お互いに歩み寄るように促す方法もあります。
いずれにしても、ここでも当事者と仲裁をする人間との関係性が重要になります。
「誰の話だったら素直に聞いてもらえるか」が重要で、そういう人材がいない場合はここまで介入せず「当事者同士でお願いします」が無難です。
騒音だと言いがかりをつけられたと相談されたら
気を付けていても、近隣住戸から騒音だと言いがかりに近い苦情を言われることもあります。
「言いがかりだから何とかしてほしい」と理事会(管理組合)に相談があった時の注意点をご紹介します!
騒音だと苦情があった場合の対応例
心当たりがあれば
「すみません、○○という事情がありまして…できる限り静かにするよう注意します。申し訳ありません」
と言ってお詫びしてもらいましょう。
心当たりが無い場合は、
「そうですか…ちょっと心当たりが無いのですが、うちも音を出さないように気を付けます」
といった対応をしてもらうようにしましょう。
いずれの場合でも、客観的にみて騒音かどうかは別として「相手は騒音だと感じている」というのは間違いないので、例え言いがかりだと思ったとしてもこの点を否定しないことが重要です。
そして、2~3日後に騒音だと言われた側から連絡し、
「ここ2~3日、音を出さないよう注意しているのですが、うるさくないですか?」
と言って相手に配慮していることを伝えるようにしてもらってください。
騒音の本質は人間関係ですので、「自分の事を気にかけてくれているんだな」ということが分かれば些細な音など気にならなくなることもあります。
苦情をよせられた部屋が無関係の場合もあるので注意!
騒音に関する苦情が寄せられた際、「上の部屋がドンドンと音を出していてうるさい」「いつも隣から音が聞こえる」といったように、理事会から特定の住戸に対して注意を求められるケースも多いと思います。
本人にはそのように聞こえていても、騒音の発生源は全く違う住戸だった、ということはよくあります。
騒音被害を訴えてきた方の言う事を鵜呑みにせず、騒音の発生源は他にある可能性も頭に入れて対応するようにしましょう。
被害を訴えている人の言う事だけを鵜呑みにしないようにしましょう。
統合失調症等による幻聴の場合
さて、ここまでは相手が「健常者」であることを前提にお話しをしてきましたが、最後にもう一つ。
「統合失調症」です。
こちらの記事がわかりやすいので、初めて聞いたという方は見てみてください。
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要するに、脳内の何らかの異常で「幻聴」や「妄想」などの症状が現れる病です。
発症率は100人に1人弱とされており、軽度の方もいるとはいえ、決して少ないとは言えません。
精神面の病をタブー視しているのか「マンション 騒音」と検索しても、統合失調症に言及する記事はほとんど出てきませんが、実はこの統合失調症によってありもしない騒音(幻聴)が聞こえてしまっているケースもあります。
話し合いで解決することは難しい
統合失調症は幻聴や妄想といった症状が出ているにも関わらず、「自分の感覚・思考が病のため歪んでいる」事を認識できなくなるという特徴があります。
そのため、統合失調症の方が相手の場合は話し合い等で解決することは困難となります。理事会(管理組合)ではそういった病もあることを頭の片隅に置いておいてください。
幻聴が聞こえてしまうおばあちゃん
実は、私が住んでいるマンションの隣の住戸にも統合失調症のおばあちゃんが住んでいましたので、体験談としてご紹介したいと思います。
正確に言うと「統合失調症のおばあちゃんが住んでいることを知っていて、敢えてその隣に引っ越した」という表現が正しいでしょうか。
マンションの理事会(管理組合)でも問題になっていたようで不動産屋から事前に「告知事項」として説明を受けましたが、隣の住戸にそのようなおばあちゃんが住んでおり、私の前の居住者はおばあちゃんから嫌がらせをされてなんと1週間で退去してしまったそうです。
それを聞いた私は、「よく騒音問題の相談を受けるけど、マンション管理のプロとして自分自身も騒音問題を体験してみなくては」と考え、そこに住むことを即決。
契約の際には「隣の住民に嫌がらせをされても6か月間は退去しない、途中で退去した場合でも6か月分の賃料を支払う」という誓約書まで書かされました。
入居後に隣のおばあちゃんのお話を聴いてみると、次のようなことがわかりました。
- いつもピーピーうるさい騒音が聞こえている(幻聴)
- その音はだいぶ前に住んでいた寺内さん(仮名)が嫌がらせのために鳴らしていると思っている
- おばあちゃん曰く、寺内さん(仮名)は「知的障害のヤクザ」らしい
- そして今も私が寺内さん(仮名)を部屋に匿っていて、嫌がらせを続けていると思っている(妄想)
もはやホラーですが、本人は本気でそう思っているんですね。
「寺内がいるのはわかっている。部屋を見せなさい!」と言うので、何回か言われましたが一度も拒否せず毎回部屋に上げて気が済むまで見てもらいました。
まあ開けること開けること。
お風呂の蓋の中やトイレの便器の中に寺内さんがいるわけないでしょうに…と思いましたが、口をはさんではいけません。
靴箱やクローゼットの中をチェックして寺内さん(仮名)がいないことを確認すると不服そうな顔をして帰っていきます。
また、廊下などですれ違った時に挨拶をすると、
「この嘘つき!」
「ロクな仕事してないでしょあんた!」
と暴言を吐かれますが、毎回気にせず「おはようございまーす!」と挨拶を続けます。
そんなことを2か月ほど続けたある日、おばあちゃんは突然、
「関わりたくないわよこのキ〇ガイ!!」
と言い放ち、その後「部屋を見せろ」ということも無くなり、すれ違っても暴言を浴びせてくることが無くなりました。
私がマンションに入居してから間もなく1年が経ちますが、まだ幻聴が聞こえるようで時々大音量でテレビを観ていたり窓をドン!と閉めることはあるものの、私は特に気にならず普通に生活できています。
私の場合は少し特殊かもしれませんが、統合失調症という病があることを知っているか知らないかでストレスの度合いも違ってきます。
統合失調症と言っても様々なケースがあるので一概には言えませんが、付き合い方次第では理事会(管理組合)を介さずとも生活を続けることができるという事をお伝えするため、私の体験談をお話しさせていただきました。
また、私は
- 相手の話を遮らないできちんと聴く
- 相手のいう事を否定しない
- 拒絶せず、こちらから声かけを続ける
といったことを続けて解決できましたが、全ての方に効果的かというとそうとは限らないようなので、実際にこのような状況に直面した時は医師やカウンセラー等の専門家にご相談されることをおすすめします。
マンションの理事会(管理組合)で騒音問題を解決する方法まとめ
今回は、マンションの理事会(管理組合)で騒音問題を解決する方法についてお話しさせていただきました。
マンションの騒音問題の本質は「マンション住民の人間関係の希薄さ」にあります。
今回ご紹介した方法で、騒音の「予防」を心がけてみてください☆