マンションの理事会で避けては通れないトラブル。
そんな中でも特に多いのが暴走するクレーマーによるトラブルではないでしょうか。
「理事会の決定に対して激高して怒鳴り込んできた」
「理事会で議論して決めたことなのに、責任を取れ等といわれのない中傷をされる」
「クレーマーが暴走しても管理会社は対応してくれずに野放し状態…」
そんな経験はありませんか?
私も経験が浅いころはそのようなクレーマーに戸惑い、対応を誤って大炎上させてしまっていました。
ところが、マンションの理事会に現れるクレーマーへの対応は、ちょっとしたコツをきちんと押さえておけば、ピンチをチャンスに変え、マンションをより良くしていける可能性を秘めています。
今回は、
- クレーマーと戦う際の心掛け
- クレーマーが理事会に現れた時の具体的な対応
- クレーマーが総会に現れた時の具体的な対応
についてご紹介したいと思います!
今回の記事は割と「管理会社のフロント目線」で理事長さんや理事さんでも応用できそう、というものを書いています。
お仕事でやってる管理会社と違って理事長さんや理事さんにクレーマーのお相手までしてやる義理は無いのですが、身に付けておくと便利な場面も多いのでご参考まで。
クレーマーと戦う前に
さて、トラブルを引き起こすクレーマーと戦う前に気を付けていただきたいことがいくつかありますので、以下に挙げていきます。
今後も同じマンションで生活することを忘れずに
大きな声で、攻撃的な言い方をされるとついつい「売り言葉に買い言葉」でクレーマーと怒鳴りあいのトラブルになってしまい、たとえ問題が解決してもわだかまりが残ってしまうこともあります。
お互いに今後も同じマンションに住み続けるわけですから、怒鳴り返してやりたい気持ちをグッと抑えて、トラブルはできるだけ冷静に対応することを心がけましょう
冷静に対応しましょう。
クレーマーとタイマンを張らない
お互い子どもではないのでタイマンを張るのはやめましょう。
私が新卒で初めて管理会社に入社した時、上司にまず言われたことの1つが
「客(クレーマー)と絶対にタイマン張るなよ。」
でした。
当時は意味がよくわからなかったのですが、今ならすごくわかります。
マンションの理事会でも、マンション内での日常生活でも、「タイマンを張らない」。
これ、ものすごく重要です。
タイマンを張ってはいけない理由①舐められる
人間は「こいつら強そうだし、人数的にも勝てそうにないな…」と思えば弱気になり、戦おうとすらしません。
反対に、「こいつなら勝てるかも」と思うとどんどん強気になっていきます。
クレーマーに「こいつなら勝てる(負けない)かも」と思わせてしまうと余計に強気になり、トラブルが大きくなってしまう可能性があります。
タイマンを張ってはいけない理由②一般人がドン引きする
そしてトラブルが発生した時にクレーマーとタイマンを張ってはいけない理由はもう一つあります。
それは、クレーマーとタイマンを張ることで他の理事会メンバーや一般の組合員の当事者意識が薄れ、「触らぬ神に祟りなし」という意識が生まれます。
「触らぬ神に祟りなし」という意識が蔓延すると、ひいては理事会そのものに対する無関心をも招いてしまい、マンションの理事会運営に支障を来たしかねません。
特にマンションは良くも悪くも多数決の原理で物事が決まります。
クレーマーが強気になって暴走を始める前に、そして他の理事会メンバーに「触らぬ神に祟りなし」という意識が蔓延する前に、他の理事会メンバーや居住者をうまく使って対応しましょう。
「ご不満は理解いたしました。ただ、申し訳ありませんが私1人では決められないので、次の理事会にご出席いただけませんか?」
「皆様にも〇〇さんのご意見を聞いていただき、皆様のご意見を伺った上で検討したいので、総会にお越しいただけませんか?」
と言って、できるだけ多くの人がいる場所に出てきてもらいましょう!
クレーマーを遠ざけない
もう1つ、新卒の時に別の先輩から言われたのが、
「自分から踏み込んで行けよ!」
でした。
これも最初は理解できませんでしたが、この「クレーマーの懐に自分から踏み込んで行く」感覚がわかってからはマンション管理の仕事がとても楽しくなりました。
「クレーマー」というと、だいたいは
- 真剣にマンションの事を考えている人
- とにかく誰かに文句を言って憂さ晴らししたい、もしくは承認欲求を満たしたい人
このいずれかなのですが(これらの複合タイプもいますが)、お話を聞いてあげるだけで解決することもけっこう多い。
真剣にマンションの事を考えている人の場合
むしろ、個人的にこのタイプは「クレーマー」に分類すべきではないと思っています(この記事では便宜上「クレーマー」とさせていただきます)。
このタイプのクレーマーの場合、確固たる信念や主義・主張があるので、逃げれば逃げるほど、地の果てまで追いかけてきます。
人は追いかけられると無意識にその人を遠ざけ、逃げようとしてしまいます。
するとまた追いかけまわされ…という無限ループに陥ります。
宗教やビジネスの勧誘と同じ構図ですね。
では、そんなクレーマーの無限ループ地獄から抜け出すには、どうすればいいのでしょうか。
答えは非常にシンプル。
とにかく話を聴く。
これだけでいいんです。これだけでクレーマー問題の大半は解決できます。
「そんな上手くはいかないよ…。だって本当にめんどくさいんだからあのクレーマー」
今現在、クレーマーにお悩みの方はそう思われるかもしれません。
気持ちはわかります。
私も昔はそう思っていました。
ただ、そう思うということは無意識レベルでクレーマーを遠ざけて逃げているんです。
そして、クレーマーはその逃げの姿勢をものすごく敏感に察知します。
何故なら、いつも色んな人に逃げられているから。笑
考えてみればわかると思いますが、日常生活の中で、確固たる信念を持っていて、その場の空気や流れにも負けず、自分の主義・主張を貫く人はかなり少数派です。
そんな少数派に対し周囲は
「面倒な人」
「空気読めない人」
といって遠ざけます。
普段から遠ざけられているので、遠ざけられたり逃げられたりすることに過剰に反応します。
そんなクレーマーに対して、
「どうしたんですか!?大丈夫ですか!?お話し聴かせてください!!」
と、訊いてみてください。
きっと滔々と思いの丈を話してくれるはずです。
「でも聞いたら結局言われたことに対応しないといけないんでしょ?面倒だなあ…」
いえいえ、ご心配なく。
最後まで話を聴いた上でこう言いましょう。
「素晴らしいですね!実現できるかはわかりませんが、ぜひ他の理事会メンバーにも聴いてもらいたいので、理事会でお話しいただけませんか!?」
「それはいいですね!ぜひ検討したいのですが私たちだけでは力不足で…〇〇さん、来期の理事会メンバーに立候補していただけませんか!?」
ご要望は、そのクレーマー本人にやってもらえばいいんです。
クレーマーからあーせいこーせい言われた理事会が嫌々対応するよりも圧倒的に早く物事が進むためトラブルになる可能性は非常に低くなります。
もともとこの手のクレーマーは人とは違った視点から深く物事を考えていたりするので、理事会メンバーになってもらったら思いのほか良い方向に事が進んでいった、なんてことはよくあります。
そして何より、クレーマーは自分で理事会の仕事を経験をすることで、
「理事会ってこんなに労力がかかるんだ…」
と、口に出さずとも実感するので、理事会メンバーを退任した後はかなりの確率で以前よりトーンダウンします。笑
この人嫌だなぁ…と感じた時ほど、意識して自ら懐に飛び込んでいきましょう。
今後も自分が理事を続けるつもりなら徹底抗戦(一般の組合員の目を意識しながらですが)してもいいのですが、ただ輪番でなっただけだし…という方なら褒めておだてて次の理事に…が無難かなと。
その場合、理事長に立候補して更に暴走…ともなりかねないので匙加減が難しいのですが。
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とにかく誰かに文句を言って憂さ晴らししたい人の場合
ここまでやっても話し合いに応じず、暴言を吐き続けるような場合は後者の「本物のクレーマー」なので、一定のところで前者の場合と同様に理事会・総会への出席を促しましょう。
ずっと攻撃され続けると気が滅入ってしまいそうになるかもしれませんが、そもそも理事はマンションの所有者全員の中から総会で選ばれた、複数名いる理事会メンバーの1人に過ぎません。
仮に理事会の対応に何か問題があったとしても、余程悪質でない限りあなた1人が責任を追及される筋合いはありません。
「自分1人が悪いわけではないのだ」
ということをしっかり自覚して、周りの人に協力を求めながら冷静に対処しましょう。
冷静に、冷静に。
クレーマー対策【理事会編】
さて、クレーマーと戦う際、トラブルを起こさないための心がけとして、
- タイマンを張らない
- 遠ざけない
ということをお話しました。
ここからは、実際に理事会に出てきてもらった後の対応についてお話しします!
とにかく話を聴く
先にお話ししました通り、クレーマーは話を聴いてもらいたい「黒いひつじさん」であるケースが多いので、まずは反論せずにとにかくお話を聴きましょう。
そして、わからないことがあればそのままにせず、話が一段落したところで分からない点を質問してみましょう。
質問をする際に気を付けていただきたいのが、
「出来ない理由を探さない」
という点です。
人は無意識に現状を維持し、変化を拒絶する習性があります。
会社のお給料に不満があっても会社を辞めなかったり、お金にだらしない彼氏と別れられなかったり、普段行かないセミナーや勉強会に参加しようとすると何故か当日体調を崩したり…
とかく人は現状を維持して変化を拒絶します。
そのため、出来ない理由を探さないように意識して質問をしないと、「無意識に」出来ない理由が口をついてしまいます。
「でもそれって〇〇だから出来ないんじゃないですか?」
「それをやると〇〇という問題が出てきますが、それはどうするんですか?」
クレーマーは拒絶されることに敏感です。
このような質問の仕方をすると、あっという間に大炎上し、売り言葉に買い言葉で収拾がつかなくなり大きなトラブルに発展…という場面に何度も遭遇しました。
ですので、クレーマーの要望に対して質問する時は「一緒に出来る理由を探す」ことを意識しましょう。
「現状は〇〇のため難しいので、どこを改善すればできるか考えましょう」
「それをやると〇〇という問題が出てきますので、その問題を解決するにはどうすればいいか考えましょう」
と、言い方を少し変えてみてください。
言っていることは同じですが、印象がまったく違いませんか?
「あなたの仰る事はよくわかります、しっかりとお話を聴きますよ」という姿勢を見せてあげれば、クレーマーも必要以上に攻撃的になることは無いはずです。
兎にも角にも、まずはしっかり話を聴いて受容することを心がけてみてください。
管理規約・使用細則に基づいて話をする
もう一つ大切なのが、過去の慣習ではなく、管理規約や使用細則に基づいて話をするということです。
もちろんマンションによってケースバイケースではありますが、過去の慣習や一般常識を持ち出してしまうと人それぞれ考え方にバラつきが出てしまいますし、トラブルに繋がりやすくなります。
お手元に管理規約や使用細則が無いようでしたら、事前に管理会社に相談して準備してもらいましょう。
また、「管理規約(もしくは使用細則)を改定すればできること」と、「管理規約(もしくは使用細則)を改定してもできないこと」があると思いますが、管理会社の社員の方であれば大体把握していると思いますので、その点も訊いておくと良いと思います。
必ず「根拠」となる管理規約・使用細則を確認しましょう。
クレーマー対策【総会編】
マンションの総会当日、それまで大人しかったクレーマーが突然現れて対応に追われる…そん場合の対応についてご紹介します!
議案と直接関係なければ議案の審議終了後にしてもらう
よくあるのが、議案に関係のないクレームや意見を話し始めるパターンです。
マンションの総会議案は複数の議案で構成されており、それぞれの議案ごとに、
議案の説明 → 質疑応答 → 採決 という流れで進みます。
出席者の中には総会の後に予定があって時間が限られている方もいらっしゃるので、議案に関係のない質問やクレームが続くと他の出席者もイライラして険悪な雰囲気となり、トラブルに繋がってしまいます。
議案に関係のない質問やクレームがあった場合には、議長(多くの場合は理事長が努めます)から、
「すべての議案の採決が終わってから質疑応答の時間を設けますので、申し訳ありませんがこの議案と直接関係のないご意見・ご質問についてはその時にお願いいたします」
と言ってスムーズに採決に進めるようにしましょう。
総会の議事進行についてはこちらで詳しく解説しています↓↓
次回の理事会に出席してもらうように促す
既にお話ししました通り、クレーマー対応はとにかくお話をしっかり聞くことが重要です。
全議案の採決が終わってから意見や質問を受け付け、お話を最後まで聞いた後、次の理事会に参加するように促してみましょう。
その際、マンションによっては総会で役員(理事会メンバー)が変わるケースも多いと思いますので、次期役員の方々にも
「次の理事会にお越しいただき、そこで改めてお話しを聴いてから理事会で検討するという形でよろしいですかね?」
といって了承を取っておきます。
また、クレーマーが総会に出席して意見を述べることが予想できていれば、事前に来期役員の方に、クレーマーが総会に出席した場合は次回理事会への出席を促すことを根回ししておくと良いでしょう。
マンションの理事会でのトラブル対応まとめ
今回は理事会・総会でのトラブル、特にクレーマーへの対応についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
トラブルが起きた時こそ、1人でなんとかしようとせず、逃げたい気持ちをぐっとこらえて自ら踏み込んで行き、そして何より相手の話をしっかりと聴くことが大切です。
マンションがより良い方向に進んでいけるよう、ぜひ試してみてくださいね!