マンションの総会で監事に選任されて、何をすればいいのかわからず困った経験はありませんか?
「そもそも監事って何?」
「監事になって監査をしてほしいと言われたけど、やり方がわからない…」
「監事ってどうやって決めるの?」
私も昔、監査ってどうやればいいのかと訊かれて困った経験があります。
確かに完璧にやろうと思うと大変ですが、最低限のチェックなら素人でも可能です。
そこで今回は、
- 監事の役割
- 素人でもできる監査の方法
- 監事の選任方法
これらについてお話ししたいと思います!
マンションの監事の役割
分譲マンションでは、理事会を中心に管理組合の運営を行います。
収支決算案の作成や保守点検の実施、修繕工事の実施等、管理会社にも業務を委託しながら運営していくことになりますが、その管理組合の運営について、総会招集手続きなどの「業務面」と、管理費の収納等の「会計面」のチェックを行うのが監事の役割になります。
マンション標準管理規約第41条
監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
2 監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。
具体的には、
- 理事会に出席して、不正を働く理事がいないかチェックする(業務監査)
- 理事会(もしくはその委託を受けた管理会社)が作成する「決算書類(収支報告書、貸借対照表、財産目録等)」と、口座残高や、領収書等の証憑類をチェックする(会計監査)
この2つが監事の主な仕事になります。
業務監査については、例えば総会の招集通知をきちんと規約で定められた期間(標準管理規約では会日の2週間前まで)に配付されているか等、管理規約と照らし合わせて不正がないかをチェックします。
大規模マンションや複数棟で構成される団地の場合は監事を複数名選任しますが、小規模~中規模マンションでは1名であることが多いかと思います。
形態別では、団地型のうち4~5棟以上で「2~3人」が「1人」を上回っている。
引用:平成30年度マンション総合調査(84ページ)
難しいのが会計監査で、きっちりやろうと思うと専門的な知識が要求されます。
そこで、ここでは最低限行っていただきたい、素人でもできるチェック方法をご紹介したいと思います!
素人でもできる監査の手順
会計監査の一番の目的は横領を防ぐことにあります。
一番横領しやすいのが預金からなので、そのチェック方法について順を追ってご説明します。
①必要な資料を揃える
まずは、必要な書類を揃えます。
- 貸借対照表
- 財産目録
- 収入・支出明細書
- 残高証明書
- 預金通帳
これらの書類を集めましょう。
管理会社がいる場合、貸借対照表、財産目録、収入・支出明細書、残高証明書は管理会社が用意してくれます。
預金通帳は管理会社に預けている事が多いのですが、できれば監査の時に一時的に管理会社から返してもらうようにしてください。
②預金残高をチェックする
これらの書類が準備できたら、次の3点をチェックします。
- 「貸借対照表」もしくは「財産目録」の預金残高と、残高証明書の残高が一致するか確認する
- 預金通帳の決算日時点の残高と、残高証明書の残高が一致するか確認する
- 預金通帳を見て、決算日の前後で理由がわからない入出金が無いかチェックする
貸借対照表(もしくは財産目録)の預金残高と、残高証明書の残高、預金通帳の決算日時点の残高は必ず一致するはずなので、ここが一致しないということは決算書類が間違っているか、横領が行われているかのどちらかです。
また、期中に横領が行われた場合、決算日前に一時的に同額を預金口座に入金して、監査終了後にもう一度口座から引き出すという手口もあります。
この場合は預金通帳の決算日前後に理由の不明な入出金の履歴が残りますので、理由がわからない入出金があった場合は管理会社に理由を確認するようにします。
③貸借対照表の資産科目をチェックする
貸借対照表もしくは財産目録の「資産の部」の項目には、預金だけではなく、「預金(現金)としては存在しない資産」が計上されます。
例えば、前払保険料の未経過部分や有価証券等がこれにあたりますが、預金通帳から仮に10万円出金しても、「資産の部」にこれらの科目で10万円計上してしまえば預金残高と一応の帳尻は合わせることができます。
この方法の横領は管理会社もグル(もしくは管理会社が犯人)で無ければ使いにくいため可能性は低いですが、資産の部に怪しい科目が計上されていないかチェックしましょう。
④余裕があればその他の書類にも目を通す
上記①~③を行って余裕があれば収入・支出明細書にも目を通します。
これについてはいつ、どんな物に、いくら支払ったか(入金があったか)が記載されています。
ざっと目を通して、
「これってこんな金額するの?」
「これって管理費で買っていいものなの?」
というものがたまにあったりするので、ここもチェックできると尚良しです。
不正を見つけたら総会で報告する
マンション標準管理規約第41条に記載の通り、監事は不正を見つけた時は理事会に報告しなければなりません。
また、必要に応じて臨時総会を招集することもできます。
監事による臨時総会招集についてはこちらで詳しくお話ししていますのでご参照ください。
監事の選任は必ず総会で行う
これまでのお話しで分かりいただけたと思いますが、監事の主な役割は理事会(管理組合)の不正のチェックです。
したがって、理事会内で都合の良い人を監事に選任できてしまっては意味がありません。
そのため、マンション標準管理規約で理事長・副理事長・会計担当理事は「理事会で選任する」とされているのに対し、監事は「総会で選任する」とされています。
マンション標準管理規約第35条
管理組合に次の役員を置く。
一 理事長
二 副理事長 ○名
三 会計担当理事 ○名
四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任
する。
時々、「役員候補者」を総会で選任し、後で監事も含めて互選で役職を決めるのが慣例になっている管理組合もありますが、これは誤りで、監事だけは総会議案書を配付する時点で候補者を明確にしておかなければなりません。
マンション理事会(管理組合)の監事の役割まとめ
今回はマンション理事会(管理組合)の監事の役割と簡単な監査の方法をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
突然監事を任されてもよくわからないし、ついつい理事会や管理会社に言われるがまま監査報告書に捺印して提出してしまう方も多いと思いますが、今回ご紹介した方法で最低限預金残高のチェックはできます。
皆さんの大切なマンションの管理費・修繕積立金を守るため、面倒だな…という気持ちをぐっと押さえて監査をしてみてくださいね~!