マンションを購入すると、多くの方がそれまでの生活ではあまり耳にすることが無かった言葉がよく出てくるようになります。
代表的なところで言うと、「理事会」「総会」「自治会」「管理組合」「管理会社」等の言葉は聞いたことはあっても、自らが関わるのは初めて、と言う方がほとんどではないでしょうか。
「理事会、総会、自治会という言葉がよく出てくるけど、どんな違いがあるの?」
「管理組合と管理会社の違いって何?」
「自治会とかから文書が届くけど、そもそもどんな組織かわからない」
そんな疑問の声をよく聴きます。
そこで今回は、「理事会」「総会」「自治会」「管理組合」「管理会社」の違いや、それぞれの意味や定義について解説していきます!
マンションの理事会とは
理事会とは多くのマンション購入者から忌み嫌われる悪の秘密結社
マンションを購入した途端に頻繁に耳にするようになる言葉の筆頭がこの「理事会」ではないでしょうか。
理事会は法律上には規定がなく、マンションの「管理規約」で定められています。
マンション標準管理規約第51条
理事会は、理事をもって構成する。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
一 規約若しくは使用細則等又は総会の決議により理事会の権限として定められた管理組合の業務執行の決定
二 理事の職務の執行の監督
三 理事長、副理事長及び会計担当理事の選任
3 理事会の議長は、理事長が務める。
そのため、管理規約にこの「理事会」の定めが無ければ理事会は結成されないため、法律上当然に成立する「管理組合」とは違い、「理事会が無いマンション」というのも存在します。
具体的に理事会は何をするのかについてはこちらで詳しく書いてるのでご参照ください。
https://blacksheep-mansion.com/mansionrijikainaniwosuru/
また、「理事会」という言葉は、理事長・副理事長・理事で構成される「組織そのもの」を指す場合と、その組織で行う「会議」を指す場合があります。
ざっくり大きな流れで説明すると、マンションの所有者全員で開催する「総会」で、数名の「理事」を選任し、選任された理事で「理事会」を組織して理事長等の役職を決め、年に数回(マンションによって異なる)「理事会(会議)」を開催する、という流れです。
で、総会での理事を選任する方法として多くのマンションでは「輪番制」をとっており、数年に1回強制的に選任されるため、「えー、めんどくさ、やりたくない」という話になるんですね。
とはいえ、マンションの維持管理のために必要だから理事会があるわけで、これを「めんどくさ」と言って放っておくとどうなるか、実例をご紹介していますのでよろしければご参考までに。
マンションの総会とは
総会は、理事会のように特定の組織を指しているのではなくマンションの所有者全員(管理組合)で開催する会議を指します。
総会については区分所有法に定めがあり、年に1度開催しなければならない通常総会(定期総会や集会とも言いますが、この記事では通常総会で統一します)と、必要に応じて開催する臨時総会があります。
区分所有法第三十四条
何故「少なくとも毎年一回」招集しなければならないかと言うと、
区分所有法第四十三条
管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。
この規定があるからなんですね。
管理者(理事長)にはある程度大きな権限が与えられていますが、その業務の中身がさっぱりわからないブラックボックス状態では横領などの不正に繋がりかねないため、毎年必ず総会で報告しなさいよ、と法律で義務付けたわけです。
通常総会とは
上記の通り、毎年1回開催される総会です。
マンションによって若干違っていたり順番が変わったりしますが、
- (当期の)収支決算報告
- (来期の)収支予算案
- 管理会社との管理委託契約締結
- 来期の理事会役員の選任
このあたりが毎年審議されているはずです。
開催日について区分所有法では決まりがありませんが、マンション標準管理規約では次の通り定められています。
マンション標準管理規約第42条
管理組合の総会は、総組合員で組織する。
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。
4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。
5 総会の議長は、理事長が務める。
何故「新会計年度開始以後2か月後」なのかと言うと、
- 総会を招集するには原則として2週間前までに通知が必要(標準管理規約第43条)
- 総会議案は事前に「理事会」で決議しなければならない(標準管理規約第54条)が、理事会も原則として2週間前までに通知が必要(標準管理規約第52条)
- 理事会で審議して総会に上程する「収支決算案」については、会計年度が終わってからでないと作成できない
つまり、決算日から、収支決算案作成→理事会→総会という手続きを踏まなければならず、収支決算案の作成に要する時間を考慮すると2ヶ月くらいは猶予が必要、というわけです。
また、標準管理規約では「2か月以内」とされていますが、マンションによっては「3か月以内」と定めていることもあります。
総会はマンションの最高意思決定機関と言われており、重大な決定は総会で行われる、と覚えておくと良いでしょう☆
臨時総会とは
臨時総会は、毎年1回開催される通常総会の他に、早急に決議しなければ案件がある時に必要に応じて開催されます。
こちらは通常総会と違い、毎年必ず開催しなければならないわけではなく、必要な時だけ開催します。
臨時総会についてはこちらの記事で詳しくお話ししていますのでご参照ください。
自治会とは
自治会については、マンションによっては全く聞いたことが無い、という事もあるのではないでしょうか。
簡単に言うと、マンション単位で町内会を結成するイメージです。
特徴としては、
- 管理組合と異なり、設立は任意
- 加入も各区分所有者(居住者)の任意
- 管理組合や理事会から独立した組織
設立も任意なので、小規模なマンションでは自治会を結成せず町内会に加入しているか、自治会も結成せず町内会にも加入しないマンションもあります。
理事会がマンションの維持管理を主に行うのに対し、自治会は地域での親睦活動として、お祭りやレクリエーションの開催、地域の防災活動等、地域コミュニティに関する活動を主に行う組織、と覚えておきましょう☆
管理組合とは
マンションの管理は「管理会社」がやるもの…と思っている方も多いのですが、本来は「管理組合」が管理しなければなりません。
では、「管理組合」とは何かというと…
実は「管理組合」という言葉は区分所有法には一切出てこず、法律上は平成13年に施行されたマンション管理適正化法で初めて定義されました。
区分所有法では「管理組合法人」という言葉は出てくるのに、法人化前の一般的な「管理組合」は出てこないという謎の構成になっています。
区分所有法第三条
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
マンション管理適正化法第二条三項
管理組合 マンションの管理を行う区分所有法第三条若しくは第六十五条に規定する団体又は区分所有法第四十七条第一項(区分所有法第六十六条において準用する場合を含む。)に規定する法人をいう。
この条文から、「管理組合」は「第三条の団体」と言われることもあります。
まぁ、呼び方はともかくとして、区分所有者(マンションの購入者)は全員で、マンション全体の管理を行うための団体を作ることが法律上義務付けられているわけです。
法律上定められているので、
「ウチはそーゆーのいいです、間に合ってますんで」
とか、
「やっぱり管理組合やめたいです」
ということはできません(たまにそう言う方がいらっしゃいますが…)。
といっても、マンションの管理をしようにも皆さんご自身の本業がありますし、そもそもマンション管理の知識や経験が無いことがほとんどです。
そこで、区分所有者全員の団体(=「管理組合」)から、「管理会社」にお金を払って管理業務を「委託」しているというわけです。
一般的には、マンションの区分所有者全員のことをまとめて「管理組合」と呼んでいる、と覚えておけば良いのではないでしょうか。
管理会社とは
議事録を駆使して言葉巧みに管理組合をコントロールする陰の支配者
一口に「不動産」と言っても売買・仲介・賃貸・管理等いろいろあるように、「管理会社」にもいろいろあります。
大きく分けると「共用部分の管理会社」と「専有部分の管理会社(賃貸管理会社)」の2つに分かれますが、上述の理事会・総会・管理組合等に関わってくるのは「共用部分の管理会社」です。
また、中には共用部分・専有部分の管理両方を行っている管理会社もありますが、その場合でも基本的には別部署になってます。
一応、それぞれの解説をしていきます!
共用部分の管理会社
共用部分の管理会社については、マンション管理適正化法で次のように定義されています。
マンション管理適正化法第二条
六・七・八の条文から先に結論を申し上げると、「基幹事務」を含む管理事務を行うことが共用部分の管理会社の法律上の定義、ということになります。
では、「基幹事務」とはなんぞや?と思われる方もいらっしゃるかと思いますので、少し長くなりますが解説していきます。
「マンション標準管理委託契約書」(国交省が作成した管理委託契約書のひな型)では、管理会社が行う管理事務として、次の一~四の業務が記載されています。
マンション標準管理委託契約書第三条
管理事務の内容は、次のとおりとし、別表第一から第四に定めるところにより実施する。
一 事務管理業務(別表第一に掲げる業務)
二 管理員業務(別表第二に掲げる業務)
三 清掃業務(別表第三に掲げる業務)
四 建物・設備管理業務(別表第四に掲げる業務)
※「別表」はここでは割愛します。「標準管理委託契約書」で検索すると出てきますのでご興味のある方は見てみてください。
この中で、一の「事務管理業務」に「基幹事務」が含まれています。
「事務管理業務」は、「基幹事務」と「基幹事務以外の事務管理業務」に分かれていますので、標準管理委託契約書の「別表」から、それぞれ箇条書きで書き出してみます。
基幹事務
- 管理組合の会計の収入及び支出の調定(予算案作成、決算案作成、収支状況の報告)
- 出納(管理費等の収納、滞納者への督促、組合の通帳の保管、組合の経費の支払い、帳簿の管理)
- 維持修繕に関する企画又は実施の調整
基幹事務以外の事務管理業務
- 理事会支援業務
- 総会支援業務
- その他(各種点検に関する助言、各種検査等の報告・届出、設計図書や議事録等の保管)
要するに、「お金の管理や維持修繕の提案や手伝いをしてくれるのが共用部分の管理会社」であり、契約内容によっては管理員業務や清掃業務、設備点検等もやってくれる、というわけです。
いまだに管理会社は居住者の御用聞きと考えている方がいらっしゃいましたら、これを機に認識を改めましょう☆笑
専有部分の管理会社(賃貸管理会社)
対して、専有部分の管理会社(賃貸管理会社)には特に法律上の定義はありません。
但し、国交省の告示で「賃貸住宅管理業者登録規程」があるので抜粋してみます。
賃貸住宅管理業者登録規程第二条
この規程において「管理事務」とは、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて行う当該賃貸住宅の管理に関する事務又は賃貸住宅を転貸する者が行う当該賃貸住宅の管理に関する事務(賃貸人として行う事務を含む。)であって、基幹事務のうち少なくとも一の事務を含むものをいう。
2 この規程において「基幹事務」とは、家賃、敷金等の受領に係る事務、賃貸借契約の更新に係る事務又は賃貸借契約の終了に係る事務をいう。
マンションの住戸(専有部分)を人に賃貸する時に、家賃の受領や契約の更新・終了手続きを代行してくれるのが専有部分の管理会社(賃貸管理会社)、ということです。
理事会・総会・自治会・管理組合・管理会社の違いまとめ
今回はマンション理事会・総会・自治会・管理組合・管理会社の違いについてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
普段何気なく使っている言葉でも、違いがきちんと理解できていないと何かお願いしたい時にどこに話をしたら良いかわからなかったり、言うべき相手を間違えて「トンチンカンな要求」になってしまいます。
理事会・総会・自治会・管理組合・管理会社は特に混同しやすいので、この機会にぜひ確認してみてくださいね~☆