多くのマンションで設置されているエレベーターですが、保守点検会社や契約内容について考えたことはありますか?
「保守点検会社を替えると費用が安くなるって聞いたのだけど…」
「メーカー系と独立系って何?」
「エレベーターのリニューアル(更新)っていくらくらいかかるの?」
そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、
- エレベーターの保守会社(メーカー系/独立系)について
- 保守点検の契約について
- エレベーターのリニューアル(更新)について
等についてお話ししたいと思います!
エレベーター保守点検会社について
エレベーターの保守点検会社は大きく分けて2種類あります。
それぞれ特徴がありますので分けて解説します!
大手メーカー系保守点検会社の特徴
読んで字のごとく、自社(もしくはグループ会社)でエレベーターの製造から行っている保守会社を「メーカー系」と呼びます。
日本で大手メーカー系というと
- 三菱
- 日立
- 東芝
- オーチス
- フジテック
の5社。
シンドラーエレベータもありましたが色々あって今は保守部門がオーチスに売却されています。
特徴としては、
- 自社で製造を行っているので制御盤の故障時でも対応が早い
- 保守費は高め
- 他社製造のエレベーターの保守点検は受けない(自社製品しかやらない)
- 地震後の自動復旧システムの搭載が可能
といったところ。
一言で言ってしまえば「お金を払って安心を買う」というところでしょうか。
この辺りは機械式駐車場の保守点検と似ています。
プライド持って作ってメンテナンスしているので値下げしません、はビジネスですから個人的には全く問題ないと思いますが、コストカットの標的になりやすく独立系に変えちゃおうか…となりやすいです。
また、あえて「大手」と付けたのは大手じゃないメーカー系もあるからで、こういった会社は大手メーカー系と独立系の中間くらいの保守費用で受けてくれます。
独立系保守点検会社の特徴
一方独立系保守点検会社はというと、エレベーターの製造ではなく保守点検を専門にしている会社で、独立系で大手というと、
- ジャパンエレベーターサービス(jes)
- SECエレベーター
あたり。
他にも地場の独立系保守点検会社が多数ありますが、全国的に支店があるのはこの2社くらいではないでしょうか。
特徴としては、
- 制御盤は故障時に自社で修理できない
- 保守費が安い
- 105m/分の中速エレベーターまでなら基本的にどこのメーカーの物でも保守点検を受ける
- 地震後の自動復旧システムの搭載が不可
という感じ。
但し④の自動復旧についてはそもそも独立系は105m/分超の高速エレベーターの保守はほとんど受けない(=低層マンションばかり)のでそんなに問題にはならないかと。
制御盤の故障も震度5を超える大地震もそんなにしょっちゅうあるものではないので、そのあたりと保守点検費用を天秤に掛けて納得ができればアリだと思います。
マンションのエレベーターの点検(保守)費用
エレベーターの保守費用は速度と契約内容によって変わります。
速度については60m/分までを低速エレベーター、105m/分までを中速エレベーターと呼びますが、普通のマンションに入っているのは大体このどちらかで保守点検費用はほとんど変わらないので、中速エレベーターを前提としてお話しをします。
尚、はるぶー先生が105m/分を超える高速エレベーターの保守点検費用は速度に比例するとかプロットしてましたがここまで来るとビョーキです。
https://twitter.com/haruboo0/status/1041214283470725122?s=20
また、同社の横浜支社でいうと105~300m/分の高速エレベーターの保守点検ができる技術員が50名強、300m/分を超える超高速エレベーターとなると保守点検できる技術員は10名強くらいだそうで、そうなると中速エレベーターと比べて割高でもまぁそりゃそうですよねと…
POG契約の点検(保守)費用
POGとは「パーツ・オイル・グリース」の略で、一部の消耗部品の交換と注油だけを行い原則として部品交換は別途見積(有償)という契約です。
その分月々の保守点検費用は安く、大手メーカー系で月額30,000円弱、独立系だと月額10,000円前後で、ここに管理会社の手数料が乗る感じ。
手数料についてはこちらで解説しています。
部品交換が有償なので耐用年数が近づいたり劣化の兆候が見られると見積書が出てきますが、理事会も管理会社も専門家ではないので発注するべきかどうか判断のしようがありません。
また、見積書が出てくるたびに理事会開いて、予算が足りなければ総会で予算修正して…等と理事会役員の負担も大きくなるので、おすすめしません。
フルメンテナンス契約の点検(保守)費用
かごや三方枠等のリニューアルを除くほとんどの部品交換が含まれている契約で、ロープなどの部品も耐用年数が近づいたり経年劣化の兆候が見られると点検の際に無償で交換してくれます。
当然保守点検費用は高く、メーカー系で月額55,000円~70,000円くらい、独立系だと月額23,000円~27,000円くらいです。
また、POG契約からフルメンテナンス契約に変更する場合は部品交換(100万円超)の発注が条件となったり、築古の場合は若干割り増し料金が加算されたりします。
但しメーカー系に言わせると「独立系はフルメンテナンスでも耐用年数通りに部品を変えていないのではないか」とのことなので、契約前に長計提出を要きゅ…夜も遅いので寝ます。おやすみなさい。
点検の回数について
法定点検は年1回ですが、昇降機の維持及び運行の管理に関する指針によると「おおむね1月以内ごとに、点検その他必要な整備又は補修を行わせる」ことが望ましいとされており、リモート点検が可能なエレベーターであっても、どの保守会社も最低年4回は有人点検を実施します。
そのため、その他の設備点検と違い「回数減らして安くして」というわけにはいきません。
エレベーターの更新(リニューアル)時期や費用は?
エレベーターの更新時期は、メーカーの耐用年数で20年~25年程度と言われますが、多くのマンションでは25年~30年くらいで更新(リニューアル)を行います。
リニューアルの方法は大きく3種類あるので、分けて説明します!
①全撤去リニューアル
東芝さんのホームページが見やすかったので拝借。
この図の㉒敷居や三方枠も含めて更新(リニューアル)するのが全撤去リニューアルと呼ばれます。
ただ敷居や三方枠はエレベーターの走行に直接関係が無いので、多くの場合はこれらを残す準撤去リニューアルを選択します。
費用としては建物の階数にもよりますが1,000万円台後半~2,000万円弱になり、工期も1ヶ月くらい掛かります。
②準撤去リニューアル
準撤去リニューアルの場合は、上記の通り敷居等は残します。
大手メーカー系にリニューアルの見積書を頼むとほぼこの準撤去リニューアルの見積書が出てきます。
金額は1,300万円前後で、工期は2~3週間くらいです。
警備会社と契約して工事期間中常駐して荷物等を運んでもらったり、駅の階段などで手すりに沿わせて使う昇降機をレンタルしたりして対応することもあるそうです。
③制御リニューアル
油圧エレベーターの場合、制御盤等の最小限の部品のみリニューアルすることで費用を抑える方法があります。
但し、大手メーカー系は油圧エレベーターの製造を終了しているため、大手メーカー系は油圧式エレベーターの制御リニューアルは提案不可です(「大手」5社以外では受けてくれる会社もあります)。
費用は700万円~800万円くらい、工期は1週間~2週間くらいで、ここだけ見ると制御リニューアルが良さそうにも見えますがデメリットもあって、
- 油圧配管はそのまま残すので経年劣化による油漏れが起きる可能性がある
- ロープ式に比べて電気料金がかかる
- 最新の耐震・安全対策に対応できず既存不適格となることがある
ので、リニューアルを検討する際はこのあたりも勘案してください。
また、大手以外の某メーカー系に確認したところ、「うちなら最新の’14耐震まで対応可能です」とのことでした。
電気代はいかんともしがたいかな…
マンションのエレベーター点検まとめ
今回はマンションのエレベーターの保守点検や契約の種類、リニューアル(更新)等についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか。
やはり自社で製造している分、クオリティではメーカー系に軍配が上がると思いますので、あとは組合のおサイフ事情との相談ではないかと思います。
また、今回は105m/分の中速エレベーターまでを前提にお話ししましたが、タワーマンション等に設置される高速エレベーターで、120m/分を超えるとメーカー系でないと保守点検は不可能です。
組合の事情に合わせて、ぜひ検討してみてくださいね~☆